バイク用語

バイクのアシスト&スリッパークラッチの効果やメリット・デメリット

最近のバイクであれば標準装備が当たり前となったアシスト&スリッパークラッチ

でも、

  • そもそも普通のクラッチと何が違うの?
  • 「バックトルクリミッター」「スリッパークラッチ」とどう違うの?
  • どんな効果があるの?
  • いくらくらいするの?

といった疑問も浮かぶと思います。

そこで本記事では、

  • アシスト&スリッパークラッチの説明
  • アシスト&スリッパークラッチのメリット・デメリット
  • おすすめのアシスト&スリッパークラッチの紹介
  • サーキット走行での必要性

といったことを、ご紹介していきます。

筆者(@moribaicar)もロードレースを行っていた時は、アシスト&スリッパークラッチのおかげで走りに集中することができました。

もはやバイクにとってなくてはならない存在になりつつあるアシスト&スリッパークラッチについて、この機会にちょっと詳しく理解してみましょう!

アシスト&スリッパークラッチとはシフトダウンのショック軽減してくれるもの

アシスト&スリッパークラッチとは、減速でシフトダウンをした際に発生するバックトルク(過大なエンジンブレーキ)に対し、自動でクラッチを滑らせてリアタイヤが滑ったり跳ねたりするのを防ぐ機構のこと

この機構をスリッパー機構と呼びます。

スリッパー機構がなければ、エンジンのバックトルクがリアタイヤに直接繋がるため、リアタイヤがロックしたり跳ねたりと、不安定な状態になるのです。

スリッパー機構は、シフトダウンをおこなった時に効果を発揮するため、シフトダウン時以外には機能することがない部品とも言えます。

反対に、サーキット走行など急激なブレーキングをするシチュエーションが多い時には非常に効果的な役割を発揮します。

アシスト&スリッパークラッチの原理

アシスト&スリッパークラッチ

また、アシスト&スリッパークラッチは、エンジンからの動力が伝わることで、ミッション型を巻き込んで自然と深く噛み込む機構であるため、バネの力でクラッチを強く押し付ける必要がありません。

そのためバネ自体を柔らかくすることができます。

ということは、スプリング自体も柔らかいものを使用できるため、アシスト&スリッパークラッチが装着されているバイクはクラッチを握る力を軽くすることもできます

ちなみにこの機構がアシスト機構と呼ばれます。

バックトルクとはエンジン抵抗の力

バックトルク先ほどバックトルクと言う言葉が出てきましたが、もう少し詳しくご紹介していきます。

バイクの加速中はエンジンから発生した回転する力をチェーンを通して、スプロケットに伝達。そしてタイヤを回しています。

しかし減速時などスロットルを閉じる場面では、回転を止めようとするエンジンが抵抗となり、止まる方向の力が働くのです。これがバックトルクです。

さらに急激にシフトダウンをおこなうと、エンジンとタイヤの回転数の差が大きくなり、タイヤがロックする状態になるため、リアタイヤが滑ったり跳ねたりします。

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スリッパークラッチやバックトルクリミッターとどう違うの?

本記事ではアシスト&スリッパークラッチと表現していますが、実はこの呼び方が使われたのは最近です。

以前は、

  • スリッパークラッチ・・・小・中排気量
  • バックトルクリミッター・・・大排気量

と分けて呼ばれていました。

しかし最近は、排気量問わずアシスト機構とスリッパー機構がセットになったものが採用されることが多くなったため、まとめてアシスト&スリッパークラッチと呼ばれるようになったようです。

アシスト&スリッパークラッチが必要なバイク

スリッパークラッチが必要なバイクは、エンジンブレーキが強くかかるとも考えられます。

なぜなら大排気量のバイクになると、エンジンブレーキが大きくなるからです。排気量が大きいと、スロットルを閉じた際の負圧も大きく、強力なエンジンブレーキがかかるのです。

また、単気筒のバイクはピストンの容積も大きく負圧が大きいため、さらにエンジンブレーキが強くかかる傾向があります。

そう考えると、特に大排気量のバイクや単気筒などのバイクに必要な機構とも考えられますね。

ただし最近ではアシスト&スリッパークラッチのコンパクト化が進み、250ccクラスの小排気量バイクにも採用されるようになってきました。

アシスト&スリッパークラッチがないバイクはブリッピングか半クラで対応する

どうしてもスリッパークラッチが使えない場合は、ブリッピングと言って、シフトダウンをする時にアクセルを煽ってエンジン回転数を合わせる動作を行う必要があります。

ライダーが意図的にアクセルを煽る動作をしなければいけませんので、慣れるまでは非常に難しく感じるかもしれません。

しかし練習して癖づけることによって無意識にできるようにもなります。

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それ以外に有効なのが半クラ操作です。シフトダウン時のショックを逃すために、クラッチをゆっくり繋ぎます。

こちらの動画では、シフトダウン時に半クラを多用しています。

ただし半クラを使用するとその分時間のロスが生まれたり半クラ操作に気を取られることもあるため、速さを追求するのであれば、あまりおすすめできません。

サーキット走行でのアシスト&スリッパークラッチの必要性

サーキット走行
アシスト&スリッパークラッチを装着していると、減速時にいくつかのメリットが生まれます。

  1. バイクが安定する
  2. 減速しすぎない
  3. 減速に集中できる

現在のバイクは純正のブレーキ機構でも強力な制動力を発揮し、さらにタイヤのグリップも向上しています。

そのため、減速時はより簡単に強烈なブレーキングができるようになりました。

反面、ブレーキを強力にかけるとリアタイヤが簡単に浮くようになります。

その状態でシフトダウンのショックが加わると、簡単にリアタイヤが暴れたりとコントロールするのが難しくなります

ブレーキングではフロントブレーキだけではなくリアタイヤを接地させてエンジンブレーキやリアブレーキを併用する方が、より短い距離で止まることができます。

このリアタイヤに余計なショックを与えないためには、やはりアシスト&スリッパークラッチが欠かせません。

メリットをもう少し詳しくご紹介します。

①バイクが安定する

まずシフトダウン時のショックが緩和されるため、減速時にリアタイヤが暴れずにスムーズに減速することができるため、安心して減速することができます。

特に急激な減速になればなるほどアシスト&スリッパークラッチの効果は大きくなります。

②減速しすぎない

バックトルクが効きすぎると、エンジンブレーキが効きすぎて「思ったより止まってしまった..」なんてことも起こります。

アシスト&スリッパークラッチを装着している時は、適度にバックトルクを逃してくれるため、急激に減速することがなくなるでしょう。

特にサーキット走行の場合は、止まりすぎるのも1つのデメリットとも考えられるため、バックトルクを調整する意味合いでも効果を持つ機構とも言えます。

③減速に集中できる

従来は減速時のシフトダウンのショックを軽減するには、

  • アクセルを煽るブリッピング
  • 半クラでエンジンブレーキを逃す

という動作が必要でした。

しかし、ブリッピングは右手でブレーキレバーを握りながらスロットルを煽る動作をおこなわないといけないため、慣れない人にとってはブレーキングに集中できないんですよね。

フルブレーキングの時にアクセルを煽るのも非常に高度なテクニックです。

また、半クラ操作も余分に神経を使うため、できれば避けたいところですよね。

アシスト&スリッパークラッチがあると、その分余計な動作がなくなるため、ブレーキングに集中することができます。

アシスト&スリッパークラッチのデメリット

反対にアシスト&スリッパークラッチのデメリットを見てみると、

  1. クラッチの減りが早くなる
  2. スリッパークラッチ自体の値段が高い
  3. 調整が難しい

となります。

①クラッチ板の寿命が短い

アシスト&スリッパークラッチは、機構的にクラッチ板を滑らすため、当然クラッチ板が摩耗してくるため、通常より交換頻度が多くなってきます。

もし摩耗したクラッチ板を交換せずにそのまま走行し続けると、最悪走行できなくなる場合があるため、早めに交換するようにしましょう。

②値段が高い

アシスト&スリッパークラッチは、普通のクラッチに特殊な加工をしているため、当然値段もそれなりに高くなってしまいます。

バイクに後付けで導入しようとすると、その分金額が掛かってしまいます。

金額の目安ですが、有名なメーカーのアシスト&スリッパークラッチの値段は以下の通りとなります。

  • スーター製・・15万円〜
  • STM製・・12万円〜
  • FCC製・・20万円〜

また、長く使用しているとクラッチ板も摩耗してくるため、こちらも交換になければいけないため、さらに交換費用が必要です。

クラッチ板の値段の目安ですが、車種によっても違いますが、1台で7〜8枚くらい使用するため、1万円位は見込んでおいた方がいいでしょう。

③調整が難しい

アシスト&スリッパークラッチ
一般道を走行する分には特に問題ありませんが、サーキット走行を行う時にはバックトルクが気になるところ。

サーキット走行は急激に減速する場面がたくさんあり、減速時のリアタイヤのコントロールがシビアで、バックトルクの調整が走行に大きく影響を与えます。

場合によってはバックトルクを効かせた方がいい時もあるなど、微妙な効き具合を調整する必要が出てきます。

しかもこの調整を変えるとバイクの挙動が変わるため他の部品のセッティングにも影響することになるため、非常に調整が難しいともいえます。

※調整はクラッチ板を抑えているスプリングの硬さを変えれば可能です。

おすすめのアシスト&スリッパークラッチをご紹介

現在販売されているスリッパークラッチでおすすめの商品をご紹介します。

スリッパークラッチ自体値段は高いですが、取り付けるとその効果をすぐに体感できるため、決して高すぎる買い物ではないはず。

車種によって形が違うため、購入の際は型番、適合車種をしっかり確認する必要があります。

STM製アシスト&スリッパークラッチ

世界で唯一のスリッパークラッチシステム専門メーカーであるイタリアのSTM社の独自のノウハウが多数投入されているスリッパークラッチです。

他の製品と比べて値段もリーズナブルで種類も豊富で多様な車種に対応しています。

クラッチの効き具合の調整はバネ式のスプリングではなく、セカンダリースプリングというプレートでおこないます。

また、クラッチのセンターナットの取り付けは付属の専用工具が必要となります。

スーター製アシスト&スリッパークラッチ

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MotoGP moto2クラスでも使用されていたスーター製のスリッパークラッチとなります。

取り付けに特殊工具が必要ありません。もちろん街乗りでも使うことができます。

FCC製アシスト&スリッパークラッチ

アシスト&スリッパークラッチ
こちらはクラッチで有名なメーカーであるFCCから販売されているレーシング用のスリッパークラッチです。

主にホンダ系の車種で使用されることが多いです。(CBR600RR、CBR1000RR等)

値段の方も結構しますが、メンテナンス製に優れており、スプリング交換も容易にできるため、セッション中にもセッティングを行うことができます。

筆者もレースで乗っていたCBR600RRで使用していました。

まとめ

サーキットを走るバイクでは欠かせないものとなったアシスト&スリッパークラッチですが、街乗りバイクにも十分にその効果を発揮することができます。

アシスト&スリッパークラッチの値段は決して安くはないものの、簡単なバイクの整備ができれば意外と簡単に取り付けることができます。

実際に使用してみると、値段以上の効果を感じられるでしょう。

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