バイクに乗り始めた人や、これまでスクーターに乗っていた人であれば、バイクのギアチェンジは難しいように思うかもしれません。
特に減速しながらのシフトダウンは、「ブレーキを握りながらクラッチを切ってシフトダウンしてー」など、動作も多くてかなり苦労すると思います。
しかもエンジンの回転が合っていないとシフトダウンをした時にギクシャクしてしまいます。
そんな時に有効なのがブリッピングと呼ばれるテクニック。しっかりできればシフトダウン時のギクシャクを防いでくれます。
また、最近のバイクはブリッピングが上手くできなくても、機械によって制御してくれることも多くなってきました。
そこで本記事では、
- ブリッピングの必要性
- メリットやデメリット
- ブリッピングのやり方
- 上手くできない時の対処方法
と言った内容をご紹介していきますので、ブリッピングについて詳しく知りたい人はぜひご一読ください。
実際にブリッピングしている人ってどれくらい?
実際にブリッピングをしている人をTwitter上でバイクに乗っている人にアンケートをとってみました。
アンケート対象人数は決して多いとは言えないものの、それでも6割以上の人は「ブリッピングを毎回している」と回答していているんですよね。意外とやっている人は多いんですね。
他にもブリッピングについての意見を見てみると、次のようになりました。
ブリッピングする派
回転数合わせるの楽しいよね。
Yahoo!知恵袋
ブリッピング出来たらノークラッチでギア下げれるようになるよ。
街乗りすげー楽。
やりますよー
Yahoo!知恵袋
峠はもちろん町中でも遠くで信号変わったときとかブリッピングシフトダウンして6速から2速に一気に下げます
エンブレ効いてブレーキにも負担かけずにすぐ止まれますよ
ブリッピングしない派
6速から2速に一気にシフトダウンする方がいますがギヤを下げる度にアクセル煽ったら4回もブンブンいうわけ?ウケるんですけど・・・。そんなの族ぐらいだろ。
Yahoo!知恵袋
そんなことやってるんなら普通にシフトダウンしながらブレーキ掛けた方が早いわ。
「スムーズにシフトダウンできる」「楽にシフトダウンできる」など機能的なことを求めている人や、「楽しいからやっている」なんて人もいます。
もちろんできなくてもバイクに乗れないわけではありませんので、やる・やらないはその人の自由ですね。
ブリッピングとはシフトダウンする時にエンジン回転を合わせること
ブリッピングとは、減速時にシフトダウンした際、リアタイヤがギクシャクしないようにエンジンの回転数を合わせる動作のことを言います。
エンジンを一瞬「フォン」と吹かすため、アクセルを「煽る」ともよく言われます。
速すぎて良くわからないかもしれませんが、言葉で説明すると、
- シフトダウンをする直前にクラッチレバーを握る
- 動力を切った状態で一瞬空ぶかしをしその間にシフトダウン
- クラッチを繋ぐ
となります。
では次に、どうしてシフトダウンをした時にブリッピングをしなければギクシャクした動きになるのかについて詳しくご紹介していきます。
シフトダウンをするとエンジン回転が高くなる
基本的にアクセルをとしている状態だと、ガソリンが供給されず、スロットルバルブも閉じられているため、シリンダー内が負圧になります。
負圧の状態でエンジンが動こうとすれば大きな抵抗となるのです。
これがエンジンブレーキということになります。
エンジンブレーキは、エンジン回転数が高ければ高いほど強烈に効く特徴があります。
次に、シフトダウンした際のエンジン回転数とギア比の関係についての表を見てみましょう。
パッと見よくわからないと思いますが、ゆっくり見ていくと、シフトダウン時のエンジンの回転数と速度の関係性がわかります。
まずは、低いギアほど減速比が大きくエンジンの回転数は高くなります。
エンジン回転数が高ければ高いほど強いエンジンブレーキがかかるため、シフトダウンしてそのままクラッチを繋ぐと、いきなりリアタイヤの回転が妨げられますので、ギクシャクしてしまいます。
さらに強烈なエンジンブレーキがかかると、リアタイヤをロックしてしまうこともあります。
そのためブリッピングの空ぶかしをしてあげることで、各ギア間の回転の差を埋めてあげればギクシャクを防ぎ、スムーズに減速することができるというわけです。
また、
- 低いギアになる
- 速度が上がる
と回転数の差も大きくなりますので、ブリッピングの必要量も多くなります。
さらに、回転数を最大トルク付近でキープすることができれば、アクセルを開けた時に力強い加速につなげることができますので、サーキット走行をする人やブリッピングに慣れている人は、加速時の回転数も意識してシフトダウンを済ましているのです。
ブリッピングのメリット
ではここでブリッピングの特徴をメリットとデメリットに分けてまとめてみます。まずはメリットからご紹介します。
- スムーズなシフトダウンができる
- エンジンブレーキが効きすぎることを防ぐ
- ミッションやクラッチの負担を減らせる
スムーズなシフトダウンができる
ブリッピングをするとシフトダウン時のショックがを軽減することができるため、スムーズなシフトダウンできます。
スムーズなシフトダウンができると、バイクに余計な力がかかりませんので、安定感が生まれます。
この状態って、特にゆっくり走っている分には気ならないと思いますが、サーキットや峠道などスピードを出して走行するシーンでは安定感が必要となるのです。
そのため普段からブリッピングの練習をしておけば、いざサーキットを走る機会ができた時でも、スムーズな減速ができるでしょう。
エンジンブレーキが効きすぎることを防ぐ
もしブリッピングをせずにシフトダウンすると、クラッチを切った際にエンジン回転数が一気に落ちていきます。
その状態でクラッチを繋ぐとショックが生まれ、エンジンブレーキが効き過ぎてしまいます。
エンジンブレーキが効きすぎると、リアタイヤが跳ねたりスライドしたりして落ち着かなくなりますので、しっかりブリッピングをして回転を合わせることで、高いエンジン回転数から徐々にエンブレが効くようになります。
ミッションやクラッチの負担を減らせる
ショックが減らせられるという事は、ミッションやクラッチにかかる負担を減らす事ができます。
減速時のシフトダウンは、進もうとしている車体に対してエンジンは止まろうとするため反対向きの力がかかります。
そのためミッションやクラッチが受ける衝撃は数十キロ〜百キロ近くにもなります。
しっかりブリッピングすれば大きな衝撃を減らす事ができますので、ミッションやクラッチも長持ちさせることができるでしょう。
ブリッピングのデメリット
次にブリッピングのデメリットについてご紹介します。
- 燃費が悪くなる
- 失敗するとかなりギクシャクする
燃費が悪くなる
アクセルを一瞬「フォン」と回すため、理論上はその分燃費が悪くなります。ただし、あくまで一瞬の出来事ですので、さほど多くの影響はないとも考えられます。
失敗するとかなりギクシャクする
ブリッピングは慣れないと意外と難しく、失敗すると反対にバイクの動きがギクシャクしてしまいます。
また、クラッチを切ったままアクセルを吹かしすぎると「フォーーン!」と雄叫びをあげてしまうこともありますので、かなり恥ずかしい思いをすることもあります。
まずはしっかり直線でできるように練習したいですね!
実際にブリッピングしている人の割合は少ないかも
実際のところ、ブリッピングをしている人は意外と少ないのも事実です。筆者も正直なところ、全日本選手権に上がるまでブリッピングをしていませんでした。
さらにレース仲間にも聞いてみると、意外としていない人が多かったですね。
ただ、全日本選手権で使用したバイクはフロント荷重が大きいバイクでしたので、ブリッピングの技術が必須教えられました。そんな時は小さいバイクで練習した記憶があります。
街中を走っているバイクもよく音を聞いてみると、なかなかブリッピングをしている人を見かけません。
良く考えると教習所で教わっていませんからこれは無理もないでしょう。全員に必ず必要なテクニックというわけではなさそうですね。
ブリッピングのやり方
ここでブリッピングのやり方について簡単にご紹介していきます。
順番に説明すると、
- ブレーキをかけて減速を始める
- クラッチを握る
- アクセルを捻ってエンジンの回転数を上げる
- シフトダウンする
- クラッチを繋ぐ
となります。順番に書くと何だか大変そうに見えますが、慣れるとクラッチを握ってからの動作はほぼ同時にできるようになります。
ちなみに③のアクセルを捻ることを「ブリッピング」と呼ぶ人もいれば、②〜⑤の動作をまとめてブリッピングと呼ぶ人もいます。
スムーズにブリッピングをするコツ
ブリッピングに慣れてきたら、少しでもショックを減らすために、クラッチを握る量を少し減らしてみましょう。
これによって、より一層スムーズなシフトダウンができるようになります。また、慣れれば慣れるほど一連の動作を一瞬でできるようになりますので、直線だけでなく、コーナリング中にもできるようになるでしょう。
ブリッピングの練習をする時に気を付けること
ブリッピングは一連の動作に慣れるまで、頭がこんがらがることもあるかもしれませんので、いきなりいつも走っている道路で練習するのは危険です。
まずは人通りの少ない直線道路で行いましょう。
最初はアクセルを開ける量が多くてギクシャクしたり、回転数が足りなくて急激にエンジンブレーキがかかってしたりしてしまうかもしれませんが、様々なスピードを試して回転数を合わせるタイミングを身体に染み込ませるのがポイントです。
2stエンジンのバイクはエンブレが弱いためブリッピングは必要ない
まれに2stエンジンのバイクでブリッピングをしている人も見かけますが、2stエンジンのバイクはブリッピングの必要がありません。
なせなら、
- エンジンブレーキが弱いから
- 失敗するとエンジンがかぶる事があるから
からです。
2stエンジンは4stエンジンと比べて構造が全く違い、アクセルオフによる負圧の発生が少ないのです。
そのためエンジンブレーキがほとんど効かず、そのままシフトダウンしてもショックが起きにくくなっています。
また、2stエンジンは中途半端にアクセルを開けると混合気が燃焼せず、プラグがカブってしまうことも少なくありません。
そのため中途半端に一瞬アクセルを開けると、かえって不完全燃焼の状態を作り出してしまうリスクもあるのです。
4stエンジンのバイクにブリッピングは必ず必要というわけでもない
ここまでブリッピングについて説明してきましたが、必ずしもブリッピングをしなければいけないということでもありません。
いくらショックが大きいからと言っても、街乗りであればガンガンエンジンを回すというわけでもありませんので、すぐに壊れるほど大きなショックは生まれにくいはずです。
さらに仮に大きなショックが起きても、大抵はリアタイヤが滑り出して力を分散してくれますので、ブリッピングができないとバイクが壊れるというわけではありません。
サーキットで速さを突き詰めていけばブリッピングは必要になってくる
ただし、サーキットで速さを突き詰めたいという人であれば、自由にブリッピングができるようになっておく必要があると言えるでしょう。
サーキット走行では、激しいブレーキングを行うため、フロントに大きな力がかかります。
するとリアタイヤが浮き上がりやすくなり、シフトダウンのショックで簡単にリアタイヤが流れてしまいます。
リアタイヤが流れると、コントロールは困難ですので、ハードブレーキの時はタイヤが流れないようにコントロールする必要があります。
しかし速く走るためではなく、バイクをコントロールするために力を使っていると、タイムを縮める事ができないでしょう。
そのためブリッピングでブレーキング時のショックを和らげる事ができる人は、より一層バイクを止める事に集中できるのです。
↓こちらの映像はブリッピングなしで半クラッチを使ってショックを逃して走行している映像となります。※ただし、スリッパークラッチは装着されています。
クラッチを繋ぐ動作に気を遣い、若干タイムロスになっています。
サーキットではこのような細かな技量の差でコンマ数秒〜数秒ほどの差が生まれます。そしてレースが終わってみると数十秒もの差となるのです。
ブリッピングが上手くできない時の解決策
先ほどもご紹介しましたが、サーキットで速さを追い求めるのでなければブリッピングができなくても問題ありません。
なぜならブリッピングができなくても別の方法で解決すれば良いからです。
- 半クラッチを使う
- スリッパークラッチが付いているバイクに乗る
- オートブリッパーが付いているバイクに乗る
これらの方法について順にご紹介していきますね。
半クラッチを使って徐々にエンジンの力を逃していけば大丈夫
シフトダウン時のショックを、半クラッチを使って逃すという方法があります。クラッチを繋ぐタイミングであえてゆっくり繋ぐげば良いのです。
ただし、半クラッチを調整するためには微妙な力加減が必要ですので、減速時のクラッチ操作に神経を集中しなければいけません。
そのため慣れるまで指先が疲れてしまうこともあります。
スリッパークラッチが付いているバイクはブリッピングできなくてもスムーズにシフトダウンできる
スリッパークラッチという機構が付いているバイクは、半クラッチの動作を機械がしてくれるため、ライダーはシフトダウンしたらクラッチをパンっと繋ぐだけで済みます。
とは言ったものの、半クラッチの力加減はバネの力によって決められているため、人間の指先のような微妙なコントロールには及びませんので、半クラッチの効き具合を調整するためにはバネを交換してあげる必要があります。
最近のスポーツバイクのほとんどに取り付けられており、レースでは必需品の部品でもあります。
最新バイクには自動でブリッピングしてくれるオートブリッパーが付いているバイクも存在する
高級リッターバイクやスーパースポーツには、クラッチを握らなくてもシフトダウンをすれば自動でアクセルを煽ってくれるオートブリッパーと呼ばれる機構が付いています。
しかもこの機構が付いているバイクは、大抵クイックシフターとセットになっていますので、一度走り始めたら走行中はクラッチ操作が必要ありません。セミオートのバイクとも言えるかもしれませんね。
まとめ
バイクのブリッピングについての必要性や方法、できないときに対処法についてご紹介しました。もう一度ブリッピングのやり方をおさらいすると、
- ブレーキをかけて減速を始める
- クラッチを握る
- アクセルを捻ってエンジンの回転数を上げる
- シフトダウンする
- クラッチを繋ぐ
となります。慣れてくれば、一連の動作が一瞬でできるようになりますので、練習してみるのも良いかもしれません。
また、どうしてもできなくても半クラッチを使ったり。現代の最新技術を利用すれば対処できます。
そのためブリッピングができなくてもさほど深刻に考えず、ちょっと暇ができた時に練習してみるのも良いかもしれませんね!
バイクの最新電子制御システムやバイクの専門用語に関しては、下記の記事も参考にしてみてください。
↓クイックシフター:クラッチを切らなくてもシフトアップできる
↓トラコン:加速時のホイールスピンを制御してくれる
↓オートブリッパー:シフトダウン時のブリッピングを自動でやってくれる機構
↓スリッパークラッチ:シフトダウンをした時のショックを和らげてくれる
↓ABS:ブレーキがロックしないように調整してくれる
↓CBS:片方のブレーキをかけた時にもう一方も作動させてくれる