バイクでシフトダウンした時に発生する減速である「エンジンブレーキ」
でもそもそもエンジンブレーキの仕組みや効果がよくわからないという人もいるでしょう。
そこで、バイクのエンジンブレーキについて解説させていただきます。
エンジンブレーキとは
エンジンブレーキとは、エンジンの回転数を利用した減速方法のこと。
バイクではスロットルを開けずに運転するとエンジンの回転数が自然に落ち、走行の抵抗になります。
その力を使って自然に減速する方法で、減速と回転数にに伴ってシフトダウンを行い、より強い制動力を得ることで通常のブレーキを多用することなくスムーズに減速することができます。
エンジンブレーキは負圧でのエンジンの抵抗を利用している
減速でスロットルを戻すとスロットルバルブというバルブが閉じて空気の通り道が無くなります。
するとエンジンの燃焼室に空気が通らなくなり、内部が負圧になり大きな抵抗となります。
さらにそこからシフトダウンという動作が加わり、エンジンの回転が高い状態でつながると抵抗も大きくなるため、「ギュイン!」と強烈なエンジンブレーキとなります。
一般道でのエンジンブレーキの使い方
エンジンブレーキは減速をスムーズにするためのもので、制動距離は走行速度や路面状況によって大きく変わるもの。
そのためエンジンブレーキを使うことでバイクを安全に停車できる速度まで下げ、無理なく停車できるように調整する意味も持っています。
例えば遠くにある信号が赤に変わりそうだと予測できる場合や、長い下り坂の向こうにあるカーブを安全に曲がり切るために減速する場合はエンジンブレーキを使うようにします。
エンジンブレーキはエンジンに負担を掛けているの?
ではエンジンブレーキはエンジンに負担を掛けてしまうものなのでしょうか?
厳密にいうと答えは”イエス”でしょう。
その理由として、燃焼室内が負圧になっているとどこか正圧から吸おうとするもの。
実はピストンはシリンダーと微妙に隙間が空いており、そこから微量ながら燃焼室にオイルが回ることもあります。
そのため、頻繁にエンジンブレーキを多用するとオイルの消費が早くなるとも考えられます。
とは言ってもほんの微量のため、あまり気にしない方がいいでしょう。
また、高回転で走行中に急激にたくさんシフトダウンすることでエンジンがレッドゾーン以上に回ってしまうこともあります。
そうなるとエンジンが高回転に耐えられなくなり最悪の場合破損してしまう恐れがあるため、絶対にレッドゾーン以上に回らないようにしましょう。
エンジンブレーキのメリット
エンジンブレーキを使用することでいくつかのメリットが存在します。
- ブレーキに負担をかけない
- 減速時に車体が安定する
- 燃費が向上する
以下でご紹介しますね。
1.ブレーキに負担をかけない
前後のブレーキに加えてエンジンブレーキで減速することにより前後ブレーキの負担を減らすことができます。
するとブレーキパッドの消耗も少なくて済む上、ブレーキの使いすぎで熱を持つことにより発生する「フェード現象」が発生しにくくなります。
2.減速時に車体が安定する
エンジンブレーキはリアタイヤが後ろに引っ張る方向に力がかかるため、減速時にリアタイヤも止まろうとします。
もしフロントブレーキだけで止まろうとすると車体の重量がフロントに全て掛かり、バイクがつんのめってしまいます。
この状態だとバイクが曲がりにくい上に、フロントタイヤが耐えきれずにスリップダウンで転倒してしまう危険性も。
そのため、エンジンブレーキを使うと、リアタイヤも止まろうとする力が働くため、前後輪でしっかりと減速することができ、バイクが安定しやすくなります。
3.燃費が向上する
スロットルを閉じている状態であるため、燃料は全く使用していない状態となります。
そのため、スロットルを閉じてエンジンブレーキを掛けているときは燃料を使わずに走行しているため、燃費に大きく貢献することでしょう。
エンジンブレーキのデメリット
エンジンブレーキを使用することでデメリットもいくつか発生します。
1.強すぎると逆にバイクが不安定になる
2.ブレーキランプが点灯しない
順に説明しますね。
1.強すぎると逆にバイクが不安定になる
エンジンブレーキが強すぎるとリアタイヤがスリップしてしまい、リアが暴れたり、バイクが横に向いたりする危険性もあります。
そのため、適切な速度で適切なギヤにシフトダウンすることが重要になります。
チェーンやスプロケットなどの寿命が短くなる
エンジンブレーキは回っているリアタイヤにエンジンが止まろうとする力が働くため、加速に必要な力の方向と逆の力がかかります。
結果その分チェーンやスプロケットに負担がかかるということになります。
そのため、普段から消耗品の点検はこまめに行うようにしましょう。
2.ブレーキランプが点灯しない
ブレーキランプはブレーキを掛けないと点灯しないため、シフトダウンを行い、エンジンブレーキを使う減速はブレーキランプがつかず、場合によっては大変危険に。
そのため一般道でエンジンブレーキを利用する時はフロントブレーキかリアブレーキを少し掛けてランプがつくようにし、後続車に減速を知らせましょう。
サーキット走行でのでのエンジンブレーキの使い方
サーキット走行でもエンジンブレーキは重要な役割を担っています。
主な目的は、
- コーナリング中に車体を安定させる
- 車体のスライドコントロール
となっています。
コーナリング中に車体を安定させる
バイクのコーナリング中はエンジンの動力(進もうとする力や止まろうとする力)が無いと安定して走ることができません。
特に高速コーナーなどの侵入は、エンジンブレーキをかけるとリアタイヤが止まろうとする力がかかるため、力の向きが地面に向き、バイクが引き込まれるようになりコーナリングしやすくなります。
また、感覚的にリアタイヤが地面にくっついているイメージもでき、安心感も生まれます。
もしコーナリング中にエンジンの動力がなくなれば、外側に向かう遠心力が大きく占めてしまうため不安定な状態になってしまいます。
鈴鹿サーキットの130Rというコーナーでギア抜けが起こったため、エンジンの動力がが無い状態でコーナーを抜けましたが、ハンドルが揺れ出しバイクが不安定な状態になります。
車体のスライドコントロール
トップライダーとなると、強烈なエンジンブレーキを利用することで、リアタイヤをスライドさせる技術も存在します。
もちろんエンジンブレーキを意図的に使おうとしているのではなく、高い速度から急激に減速するときにリアタイヤが勝手にスライドしてくるという領域ですが、少なくてもエンジンブレーキがあるためにこのような現象が起こっていることも事実でしょう。
エンジンブレーキの強弱の調整
実はエンジンブレーキもセッティングで調整することができます。
そこで、シフトダウン時のエンジンブレーキのショックを無くしたり、エンジンブレーキの効き具合を調整したりと様々な方法をご紹介します。
シフトダウンのショックはアクセルを煽る
まず、シフトダウン時のエンジン回転数の差で発生するショックは、アクセルを煽るということで解決できます。
シフトダウン時にクラッチを切ったときにスロットルを少し「フォン」と煽り、繋ぐことで低いギアとの回転さを埋めることができ、スムーズにつなげることができるでしょう。
スリッパークラッチのセッティングで調整する
スリッパークラッチはエンジンの止まろうとする力を自動でクラッチを滑らせて逃すという働きがあります。
この機構を使ってシフトダウン時のショックを逃したり、エンジンブレーキの力自体を逃がすこともできます。
FIマッピングでエンジンブレーキの強弱を調整する
スーパースポーツのバイクの場合はパソコンでエンジンの燃料供給の比率を調整することもできるため、エンジンブレーキを聞かせてくない場合は、あえて燃料の量を多くし、エンジンが止まらないように調整すると言ったことも行います。
ただし、これは適度な使用回転数を探したり、たくさんの実走行でのテストと調整が必要なため、高度な知識や時間が必要となります。
まとめ
エンジンブレーキはエンジンの止まろうとする力を利用していることがわかりました。
しかしブレーキがあるため、そもそもエンジンブレーキは必要ないのでは?という意見もあると思います。
でもせっかく存在しているため、ブレーキの一種として利用する方がより速く、安全に走れるのではないかと考えています。
そのため、エンジンブレーキを正しく理解して自分のライディングに活かして欲しいと思います。
バイクの最新電子制御システムは、ABS以外にもさまざまなものがありますので、下記の記事も参考にしてみてください。
↓クイックシフター:クラッチを切らなくてもシフトアップできる
↓トラコン:加速時のホイールスピンを制御してくれる
↓オートブリッパー:シフトダウン時のブリッピングを自動でやってくれる機構
↓スリッパークラッチ:シフトダウンをした時のショックを和らげてくれる
↓CBS:一方のブレーキをかけた時にもう一方のブレーキも作動させる
↓ABS:ブレーキがロックしないように調整してくれる