スーパースポーツで標準装備されつつあるオートブリッパーは、シフトダウンを楽にしてくれるため、よりライディングに集中することができます。
ここ最近普及してきた最新システムですが、そもそもどのような機構なのかわからない人も多いはず。
中にはクイックシフターと勘違いしている人も多いのではないでしょうか?
そこで、
- オートブリッパーという機構はどのような機構なのか
- どんなバイクに装着されているのか
などについて、ライダー目線としてご紹介します!
オートブリッパーとは
オートブリッパーとは、バイクのシフトダウンの際にシフトレバーを動かしますが、その時に自動でアクセルを煽って(ブリッピングして)くれる装置のことです。
では、アクセルの煽りとも言われる「ブリッピング」とは一体何なのでしょうか?
ブリッピングはシフトダウン時のショックを防ぐテクニック
減速時にシフトダウンする際、低いギアにチェンジし、いきなりクラッチを繋ぐとエンジン回転数とタイヤの回転数が合わなくなり、リアタイヤが抵抗となります。
この時、リアタイヤがホッピングしたりスネーキングしたりとバランスが崩れていまます。
ブリッピングとは、シフトダウンするときに一瞬アクセルを「フォン!」と煽り、エンジンの回転数を合わせるテクニックのことです。
しかし、ブリッピングは練習してタイミングを掴まないとなかなか難しく、慣れるまで練習が必要です。
ブリッピング無しでシフトダウンすると半クラッチを多用しなければいけない
ブリッピング無しでシフトダウンすると、
- クラッチでエンジンの動力を切る
- シフトレバーを動かしシフトダウンする
- クラッチを繋ぐときは半クラを使って徐々に繋げる
この時半クラを使わずにいきなりクラッチを使うと、ショックでリアタイヤが暴れてしまうでしょう。
半クラッチの動作がサーキット走行では大きなロスとなります。半クラッチでじわっと繋いでいる期間なブレーキングに集中したいですからね!
また、半クラッチを自動でしてくれるスリッパークラッチという機構もありますが、機械ですので、慣れた人間のように完璧ではありません。
オートブリッパー付きバイクのシフトダウン
オートブリッパー付きバイクのシフトダウンは簡単です。
シフトレバーでダウンすればいいだけです!
バイクによっては、スロットルがオフの時しかオートブリッパーが作動しないものもあるため、シフトダウンの時は無意識にアクセルを開けないようにしましょう。
オートブリッパーのメリットは”操作が楽なところ”
オートブリッパーの一番のメリットは、クラッチ操作や、アクセルを煽る動作といったブリッピングをしなくてもいいため、減速に集中できることでしょう。
サーキットを走っている時で考えると、手でブリッピングしていれば、右手でスロットルをを捻りながらブレーキレバーを握り込んでいかなければいけないのですが、これが本当に難しいんですよね。
フロントブレーキを握りつつ「フォン!」とするので、どうしても一瞬レバーへの力が抜けてしまいます。
一方、オートブリッパーなら、スロットルとクラッチ操作が必要ありませんので、ブレーキレバーを握ることに集中できます。その分自信を持って止まることができるため、よりブレーキングが上手くなるでしょう。
オートブリッパーのデメリットは”設定が難しいところ”
反対に、オートブリッパーのデメリットは、アクセルの煽り量の設定が難しいことでしょう。
ブリッピング量をコンピュータで任意の強さに設定できますが、サーキット走行では、よりシビアに調整しなければ使い物にならないことも。
例えば、
- ブリッピング量が小さすぎる・・・ショックが大きく効果が薄くなる
- ブリッピング量が大きすぎる・・・エンブレが効かなくなりバイクが勝手に進んでしまう
となります。
もちろんギア比の関係やシフトダウンするタイミングによって違いますが、基本的にギアが低くなればなるほどブリッピング量を大きくする傾向があります。
また、ブリッピングに慣れている人であれば、コーナーによってブリッピングの加減を調整できますが、さすがにオートブリッパーはそこまで臨機応変にできるわけではありません。
人間の方がスムーズにシフトダウンできるとも言えますね!
オートブリッパーの注意点はしっかりレバー動作をすること
オートブリッパー付きシフトレバーは、シフトロッドにセンサーが付いており、シフトの感覚が「カチッ」としていません。極端に言うと「グニャッ」としています。
そのため、中途半端にレバーを動かすと、ブリッピングの煽りだけが作動し、ギア抜けしてしまうことがあります。
画像は鈴鹿サーキットの130Rという200キロオーバーで進入する高速コーナーでシフトダウンのレバー操作が中途半端になりギア抜けしてしまったシーンです。
ちなみにギア抜けした時は、慌てずシフトアップする方向に入れましょう。
もしダウンの方に入れると、急激なエンブレが効き、リアタイヤがロックしてハイサイドする危険があります。必ずシフトアップするようにしましょう。
また、頻繁にギア抜けしたバイクを走行後にオイル交換すると、オイルが真っ黒に汚れていたり、鉄粉が混じっていることがあります。
これはミッションを痛めている証拠でもあるため、くれぐれもシフトダウンはレバーを「ガチャッ!」としっかり動かしましょう!
オートブリッパーは後付けできる
オートブリッパー機能がついていないバイクでも、後付けで着るキットが市販されています。
EZ-SHiFTER製後付けオートブリッパーが装着可能なバイクと価格
EZ-SHiFTER製のオートブリッパーは、以下のバイクで装着可能のようですね。金額とともにご紹介しますね。
ホンダ CBR250RR(17〜) | ¥68,040- |
ヤマハ YZF-R1(15〜) | ¥68,040- |
ヤマハ MT-09 | ¥68,040- |
カワサキ Z900RS | ¥68,040- |
カワサキ ZRX1200 | ¥64,800- |
JAM製後付けオートブリッパーが装着可能なバイクと価格
JAM製オートブリッパーの適合車種は写真の通りとなります。EZ-SHiFTER製より幅広い車種に対応しています。
値段の目安ですが、
RAPIDBIKE-RACING又はRAPIDBIKE-EVO | 117,000〜79,500円 |
工賃 | 12,000円〜 |
Blipperシフター | 53,500円〜 |
社外品ステップ装着工賃 | 8,000円〜 |
となっております。
値段はそれなりにしますが、1年間のサポートと相談を無料で受けることができます。
オートブリッパーが最初から装着されているバイク
最新のバイクに標準装備されているオートブリッパーはどんな車種についているのでしょうか?少しご紹介します。
↓サーキットを走行するバイクについてもっと知りたい人はこちらの記事でご紹介しています。
サーキットにおすすめのバイクを排気量別にご紹介
ホンダ CBR1000RR SP
ホンダのフラッグシップモデルのCBR1000RR SPにもオートブリッパーが備え付けられています。
シフトペダルにかかる踏力に応じて3段階の調整が可能となっています。
スズキ GSX-R1000
レーサータイプの双方向クイックシフトシステムを搭載しているGSX-R1000は、シフトの動きとストローク、カムの回転、スロットルバルブポジションによって最適なタイミングが弾き出されています。
ヤマハ YZF-R1
日本最高峰の全日本選手権でも負けなしのYZF-R1は2018年からQSS(クイックシフトシステム)がアップデートされ、クラッチ操作無しでシフトのアップ・ダウンができるようになりました。
さらにオン・オフ2段階の調整が可能となっています。
BMW S1000RR
筆者がレースでも乗っていたBMW S1000RRのオートブリッパーは、低いギアにシフトダウンしてもしっかり煽ってくれるのが特徴です。
反対にシフトアップ時のショックは少し大きいのが気になるところ。
カワサキ ZX-10R
従来はZX-10RR/ZX-10R SEのみに採用されていましたが、クイックシフトシステム「デュアルディレクションKQS」を全てのモデルに装備されることに。
クラッチ操作やアクセル操作を行わずに素早いシフトアップ、シフトダウンが可能となっています。
MOTOGPではシフトのショックを極限まで無くしている
MOTOGPの車両はシームレスミッションという常時噛み合い式のミッションが採用されていますので、シフトダウン時に余計なショックが発生しないように出来ています。
さらにエンジンブレーキも電子制御でコントロールできるため、回転数に応じてショックが少なくなるように自在に調整することができます。
ブリッピング機能がついている”車”もある
ちなみに車でもオートブリッピング機能がついているものがあります。マニュアル車の場合はクラッチを切ってシフトをダウンの方に入れると自動でアクセルを煽ってくれます。
また、オートブリッピング機能は任意で無効化することができるため、従来までの車に慣れている人も違和感なく運転できるでしょう。
オートブリッピング機能がついている車をご紹介します。
日産 フェアレディZ(Z34)
世界で初めてシンクロレブコントロール付き6速MTが搭載された日産のフェアレディZは、エンジンの回転を気にすることなく、シフトレバーを操作した時に即時にクラッチを繋ぐことができます。
BMW M240i
BMW M240iは2ドアのクーペタイプで軽快な走りを実現している車となります。
こちらの動画でもご紹介していますが、全く違和感なくシフトダウンできます。
もちろん必要なければスイッチを切ることで、従来のようにヒールアンドトゥすることも可能です。
オートシフター(クイックシフター)との違い
オートシフターは、別名クイックシフターと言い、シフトアップの時に一瞬エンジンの点火をカットする機構のことで、クラッチ操作やスロットルを戻さなくてもシフトレバーを踏み込む(逆チェンの時。もちろん正チェンでもできます)だけでシフトアップできる便利な機構となっています。
- シフトアップ・・・オートシフター
- シフトダウン・・・オートブリッパー
さらにショックを軽減するにはスリッパークラッチも併用するのがおすすめ
サーキット走行では急激に減速するたため、フロントがつんのめる姿勢になることがあります。
この時リアタイヤの荷重がほとんど抜けるため、シフトダウンすると、リアが暴れてコントロールを失います。
人によってはシフトダウンでわざとリアタイヤをスライドさせて、バイクを曲げている人もいます。
しかし、それでもスピードが乗ってこれば、その分強いブレーキが必要であるため、よりバイクがつんのめる方向になります。
そのため、よりシフトダウンのショックを減らすために、スリッパークラッチも併用することがあります。
スリッパークラッチはシフトダウン時のエンブレの動きを逃がす働きがあるため、オートブリッパーでシフトダウン時のショックをなくし、スリッパークラッチでエンジンブレーキも逃がすこともできます。
まとめ
オートブリッパーは、シフトダウン時のショックを和らげる「ブリッピング」を自動で行ってくれる機構で、現代のスーパースポーツではほとんどのバイクに標準装備されつつあります。
また、外付けのオートブリッパーを使用すれば、250ccクラスのバイクにも取り付けることができます。
オートブリッパーが装備されていれば、ブレーキに集中できるため、街中ではより安全に運転できたり、サーキットでは、タイムアップに繋がったりデッドヒートしている時にブレーキングでオーバーテイクできたりとメリットが多いでしょう。
最新システムによりバイクが乗りやすくなると、一層ライディングに集中できるため、さらにバイクが楽しくなること間違い無しですね!
バイクの最新電子制御システムは、ABS以外にもさまざまなものがありますので、下記の記事も参考にしてみてください。
↓クイックシフター:クラッチを切らなくてもシフトアップできる
↓トラコン:加速時のホイールスピンを制御してくれる
↓スリッパークラッチ:シフトダウンをした時のショックを和らげてくれる
↓CBS:一方のブレーキをかけた時にもう一方のブレーキも作動させる
↓ABS:ブレーキがロックしないように調整してくれる