バイクのブレーキ装置の一つでもあるCBS。
ABSは聞いたことがあるものの、CBSはどんなものなのか意外と知らない人も多いのではないでしょうか?
そこで、
- CBSとは
- CBSとABSの違い
- メリットやデメリット
- CBSが付いているバイク
などをご紹介します。
↓ちなみにABSについてはこちらの記事で詳しくご紹介しています
バイクのCBSは前後輪連動ブレーキシステムのこと
まずCBSとは、どのようなものなのかについてご紹介します。
CBSとは、「コンビブレーキシステム」の略のことで、前後輪連動ブレーキシステムを意味しています。
一昔前は、原付スクーターに採用されていることが多かったようです。
そのためスクーターを運転している時にフロントブレーキを握ると、自然とリアブレーキレバーも動いたなんて経験ありませんか?そうです、あの機構がCBSなのです。
もともとバイクのブレーキ機構は、フロントブレーキとリアブレーキ、エンジンブレーキの3つに分かれます。
そのうちの、フロントブレーキとリアブレーキどちらか一方のブレーキをかけた時に、もう一方のブレーキを走行状況によって補助的に作動させるのがCBSの役割となります。
もっと簡単に言うと、「どちらか片方のブレーキをかけると、残った方のブレーキを作動させてくれる機構」となりますね。
そのため運転に慣れていない人がブレーキ操作をおこなっても、CBSがあることにより、前後のブレーキをバランス良くかけることがでるのです。
ここでもし片方のブレーキだけをかけると、バイクはどのような状態になるのか見ていきましょう。
【フロントブレーキ】だけかけると「つんのめる」感じになる
ほとんどのバイクにはサスペンションが付いており、荷重がかかるとサスペンションは大きく沈み込みます。
特にブレーキをかけると、止まろうとするタイヤとは相反して車体は慣性で前に進もうとします。
さらにフロントタイヤだけが止まろうとするため、車体はの重心は一気にフロントタイヤの上にきます。
そうなるとフロントサスペンションが大きく沈み込むため、車体は前に「つんのめる」状態になるのです。
また、タイヤへの負担も大きくなるため、フロントタイヤがスリップして転倒する危険性も高くなります。
ちなみにフロントから転倒すると勢いよく地面に叩きつけられますので、かなり痛い思いをするでしょう。
【リアブレーキ】だけかけると制動距離がかなり長くなる
では反対にリアブレーキだけだとどうでしょう?
減速しようと思ってリアブレーキだけかけても、タイヤに十分な荷重をかけることができませんので、制動力がかなり長くなります。
また、荷重がかかっていないタイヤでブレーキをかけると、簡単にホイールがロックしてしまうでしょう。
そう考えると、前後のブレーキが同時にかけられるCBSは、かなり安全な機構であるとも考えられます。
バイクのブレーキ配分は7:3くらいがちょうど良い
ブレーキで大きな制動力を得ようとすると、フロント7・リア3くらいの割合が最も理想的とも言われています。
さらに、より強い制動力を得るため、先にリアブレーキをかけてからフロントブレーキをかけるのが一番効率が良いとも言われているのです。
CBSが付いているバイクであれば、フロントブレーキをしっかり入力すれば、順番は違ども、リアブレーキも作動するため、効率的に止まることができるでしょう。
↓ブレーキの掛け方によってバイクの姿勢が変わることについては、以下の記事でもご紹介しています
バイクのCBSは排気量51cc〜125ccまでのバイクには装着が義務付けられる
実は2018年10月1日から「道路運送車両の保安基準」等が改正されたため、新車で販売される排気量51cc〜125ccまでのバイクには、CBSの装着が義務付けられるようになりました。
ただし、代わりにABSが装着されていると装着の必要はありません。
具体的には、以下のようになっています。
- 125cc以上のバイク・・・ABSの装着が義務付けられる
- 51cc〜125ccまでのバイク・・・ABSかCBSの装着が義務付けられる
- 50cc以下のバイク・・・特に装着の義務はない
※トライアルやエンデューロ車など競技用バイクも装着の義務はない
そのため、ABSやCBSはバイク乗りの安全を守るために欠かすことができない機構と認知されつつあるようです。
バイクのCBSは大きく2種類に分けられる
CBSは、機構によって以下の2種類に分けることができます。
- コンビブレーキ・・・リアブレーキをかけるとフロントブレーキもかかる
- デュアルコンバインドブレーキ・・・どちらか片方のブレーキをかけた時にもう一方も作動する
コンビブレーキは、主にスクーターなどの小型バイクに採用される音が多く、機械的にブレーキが連動するようになっています。
また、デュアルコンバインドブレーキは、VTR800などのビッグバイクにも採用されており、コンピュータによって油圧機構がコントロールされています。
CBSとABSとの違い
よくABSとCBSがセットで表現されることがありますが、実はこの2つの機構はまったく異なる機構でもあります。
ABSは、ブレーキをかけた時にタイヤがロックしないように制御する機構ですので、急ブレーキなどの緊急回避時の安全装置とも言えるでしょう。
最近ではABS装着の義務化にともない、各メーカーの開発がどんどん進んでいるため、飛躍的に性能が向上しています。
さらに従来ABSはフロントタイヤだけに装着されることが多かったのですが、最近ではリアブレーキにも採用されるようになってきました。
このようにABSとCBSの違いを見てみると、
- ABS・・・タイヤがロックしないようにする安全装置
- CBS・・・ブレーキが前後とも作動するようにしてくれる補助装置
ということができますね。
実際はABSの開発が進んでいるため小排気量でもCBSを採用されているバイクはなくなりつつある
先ほどもご紹介したように、最近ではABSの開発が進んできたため、小排気量のバイクにも採用されることが増えてきました。
ヤマハのバイクを見てみると、ほとんどすべてと言えるバイクでABSが装着されています。
これは、ABSの方が機構的に簡単であるため、価格面や重量的に考えると、CBSよりもABSを採用した方が良いと判断されるからでもあります。
そのためCBSが搭載されているバイクはなくなりつつあります。では次に、改めてCBSのメリットとデメリットをそれぞれ見ていきましょう。
CBSのメリット
まずはCBSのメリットを見てみると、以下の2つが考えられます。
- 安定して止まれる
- 事故を防ぐことができる
安定して止まれる
CBSがあると、片方のブレーキをかけるだけでもう片方のブレーキもかかるようになっているため、前後のブレーキで安定して止まることができます。
特にフロントブレーキをかけた時にリアブレーキもかかると、バイクの理想のブレーキ配分7:3の割合に近づけることができるでしょう。
そのため、免許を取ったばかりでブレーキが慣れない人や、とっさの時に慌ててしまう人はCBSが大いに役立つのではないでしょうか?
事故を防ぐことができる
慌ててどちらかのブレーキをかけた時でも、前後のブレーキが作動するCBSは、片方のブレーキをかけた時と比べると制動距離を短くすることができます。
そのため事故に合いそうな時でも、間一髪危機回避ができるかもしれません。
CBSのデメリット
一方でCBSのデメリットをまとめると、以下の4つがあげられます。
- 減速しすぎてしまう
- ブレーキパッドが余分に減る
- 車体のコントロールがしにくい
- 車重が重くなる
減速しすぎてしまう
CBSが機能すると、嫌でも前後のブレーキがかかってしまいますので、思っているよりも減速しすぎることもあります。
特にCBS付きのバイクに乗ったばかりの人にとっては、違和感を感じることもあるかと思います。
ただし、乗っていくうちになれるとも思いますので、大きな心配はいらないでしょう。
しかし問題は逆のパターンです。CBSのバイクに慣れてしまい、いざCBSが付いていないバイクに乗り換えると、かなり不安に思うかもしれません。
ブレーキパッドが余分に減る
減速時は前後のブレーキが作動するため、その分余分にブレーキパッドが減りますので、長く乗っていると、他のバイクと比べてブレーキパッドの消耗頻度が早く感じるでしょう。
車体のコントロールがしにくい
ブレーキは減速数するだけでなく、バイクの姿勢をコントロールために使うこともあります。そのため状況によってはどちらかのブレーキだけ使用したいと思う場面も出てきます。
しかしCBSが付いていると、どうしても前後のブレーキが作動してしまうため、車体の姿勢コントロールがしにくくなります。
車重が重くなる
CBSが付いていると、その分車重が重くなります。
バイクにもよりますが、数キロ〜十キロくらい重くなることも考えられます。バイクで数キロ重くなると、燃費や加速性能、運動性に悪影響を及ぼします。
CBS付きのバイク【ホンダ車】
CBSを採用しているバイクは、主にホンダ車が多いようですので、ホンダ車の中でも特に代表的なバイクをご紹介します。
ゴールドウイング
排気量は1833ccと超巨大エンジンを搭載しており、まるで車に乗っているかのようなバイク。
ホンダのラグジュアリーバイクのフラッグシップモデルでもあるため、ABSはもちろん、「デュアル・コンバインド・ブレーキ・システム」のCBSも装備されています。
また、エンジンは水平対向6気筒という低重心のおかげで安定感はかなりのもの。さらにサスペンションは車と同じダブルウィッシュボーン式となっていますので、乗り心地には驚かされます。
VFR800
スポーツツアラーであり、過去に白バイでも採用されていたバイクであるVFR800。
どちらか一方のブレーキを作動させるともう片方の油圧も制御して作動させる「デュアル・コンバインド・ブレーキ・システム」が採用されています。
V4エンジンはVTECエンジンを採用しており、低速時は2バルブ、高速時は4バルブと切り替わるため、低回転で走る時は燃費も良く、6,400回転を境に高回転まで回すとワンランク上のパワーが味わえます。
また、スポーツバイク向けABSも搭載されているため、安全性能と走り安さが両立しているバイクでもあります。
PCX
リアブレーキを作動させると、フロントブレーキも作動するコンビブレーキが採用されているスクーターです。
250ccクラスのバイクとしてはかなりコンパクトにまとめられており、スクーターであるものの、ネイキッドなどに跨っているかのようなポジションは、小回りが必要なシーンでも、大きな安定感があります。
また、デジタルメーターの採用や随所にブルーのライトアップもされており、近未来的なデザインなのも特徴的。
まとめ
バイクのブレーキ機構でもあるCBSについてご紹介しました。
現在ではABSの開発や装着の義務化により、反対にどんどん少なくなりつつあるとも言えますが、より安全に止まるためには、欠かすことができないものでもあります。
また、一度CBS付きのバイクに乗ってみると、その制動力の高さに驚かされると思いますので、CBS付きのバイクに乗る機会がありましたら、ぜひ一度体験してみてはいかがでしょうか?
バイクの最新電子制御システムは、CBS以外にもさまざまなものがありますので、下記の記事も参考にしてみてください。
↓クイックシフター:クラッチを切らなくてもシフトアップできる
↓トラコン:加速時のホイールスピンを制御してくれる
↓オートブリッパー:シフトダウン時のブリッピングを自動でやってくれる機構
↓スリッパークラッチ:シフトダウンをした時のショックを和らげてくれる
↓ABS:ブレーキがロックしないように調整してくれる