「レースをするには動体視力を鍛えないといけないの?」
「そもそも動体視力って何?」
「どうすれば鍛えられるの?」
このような疑問をお持ちではありませんか?
時速200キロメートル以上でサーキットを走るレーサーは、単純に視力が良いだけではいけないとも言われています。
特に優れたレーサーは「動体視力がズバ抜けている!」なんてことも聞きますが、果たして動体視力とは一体どういうものなのでしょうか?
そこで、現役のバイクレーサーである筆者が250km/h以上のスピードが出る数々のサーキット走行していた経験をもとに、
- レーサーが必要な動体視力について
- 動体視力の鍛え方
- 日常でできるトレーニング方法
- 効率的に鍛えられる方法
といったことをご紹介します!
動体視力とは動いているものを認識する能力
まず、動体視力とはどういうものなのでしょうか?
動体視力とは、動くものを目で捉えた時に確実に認識できる視力のこと。
特にレース中では、
- 前を走るバイクの動きを捉える
- ピットからのサインボードの情報を読み取る
など、一瞬の判断をするのに必要となります。
↑このように走行中に流れる景色や前を走るバイクといった情報をいち早く判断しなければいけません。
一般的に動体視力を使っているスポーツで考えると、動くものを捉えて落下点を予測し、ボールをキャッチしたり蹴ったりする野球やサッカーといった球技が思い浮かぶでしょう。
動体視力が優れていると、相手やボールの動きをいち早くキャッチすることができるため、その分早く体を動かせたり、判断も正確に行うことができます。
また、レースで考えると、相手の動きを判断することが早くなったり、流れる景色から情報を取り入れるスピードが早いことで、その分余裕を持った動作ができるため、安全に速く走ることができます。
動体視力とは11種類ある視力のうちの1つにすぎない
人間の五感の一つで、80%以上の情報を取り込んでいる「視力」ですが、実は視力といっても、11種類もあります。
- 裸眼視力・・・メガネ・コンタクトレンズを使用しない視力
- 矯正視力・・・メガネ・コンタクトレンズを使用した時の視力
- 動体視力・・・動くものを目で捉えた時に確実に認識できる視力
- 静止視力・・・止まっているものを見る視力
- 両眼視力・・・両目で測った時の視力
- 片眼視力・・・片目で測った時の視力
- 中心視力・・・網膜黄斑部中心窩での視力(一番よく見える部分の視力)
- 中心外視力・・・視界でしっかり見えているところ以外の視力
- 近見視力・・・30cm付近において測定する視力
- 遠見視力・・・5mの距離から測定した視力
- 深視力・・・遠近感を感じる視力
これを見る限り、一般的な視力検査で結果が良かったといっても一概に「視力が良い」とは言い切れませんね。
静止視力と動体視力はどう違うの?
では、「動体視力」と「静止視力」はどう違うのでしょうか?
上記でご紹介したように、動体視力とは、動く物体を視界で把握する能力ですが、これに対して、静止視力は静止しているものを見る能力を言います。
そのため、静止視力と動体視力は全く別物となっているため、静止視力が良いからと言って、動体視力も高いとは言い切れませんので、視力が良い人はレースの素質があるとは限りません。
あのGP500のチャンピオン、フレディ・スペンサーも視力が悪くコンタクトをしていたそうですね!
野球のイチロー選手も視力が0.4しかないにも関わらず数々の伝説を打ち立てていますし!
動体視力は目で捉えた情報の伝達スピードの速さ
そもそも「見える」とはどういうことなのでしょうか?
本当に見えるという条件は、
- 見る:見たものを的確に捉える力
- 考える:見たものを具体的にイメージする力
- 動く:イメージした通りに実行する力
この3つの条件をバランスよく発揮する能力があると、本当に「目が良い」と言えるでしょう。
見る→考える→動く
この間の伝達スピードが速くなればなるほど動体視力が高いとなります。
動体視力は目の筋肉が比例する
伝達スピードの速さのカギを握っているのは目の筋肉となります。
本来、目の筋肉には2つの要素があります。
- 目本体を動かす筋肉(外眼筋)
- 目のピントを合わせる筋肉(毛様体筋・虹彩筋)
目を動かす筋肉は眼球を動かしているため、この筋肉が発達していれば速く動かせることになります。
しかし、動体視力に関係するのは、もう一つのピントを合わせる筋肉となり、レーサーもこの筋肉の方が重要となります。
この筋肉が発達していると、目のレンズである水晶体や瞳孔の大きさを調整し、光の取り込み量をすぐに調整してくれますので、見えているものを一瞬で判断できるようになるのです。
動体視力も2種類に分けられる
動体視力は、主に次の2つに分けることができます。
- DVA動体視力
- KVA動体視力
このアルファベットは一体何なのか…順にご紹介します。
DVA動体視力
DVA動体視力とは、「Dynamic Visual Acuity」の略のことで、上下方向や横方向に動くものを見る能力を示しています。
DVA動体視力は目の運動、つまり目線が動く視力のため、電車に乗っている時に看板の字が読めるというのは、このDVA動体視力が関係しています。
レース時で接戦になった時に、相手の動きを確認しながら走行する場面などがありますが、その時はDVA動体視力が必要とも考えられます。
KVA動体視力
一方KVA動体視力は、前後方向に動くものを正確に見極める能力となります。
例えばオートバイレースの場合は、すごいスピードで迫ってくるブレーキングの目安看板を見たり、ピットからのサインボードを的確に確認するにはKVA動体視力が必要となりますね。
まとめると、
- DVA動体視力・・・上下左右方向
- KVA動体視力・・・前後方向
を見極める能力となります。
レーサーはDVA動体視力とKVA動体視力両方が必要
レーサーはこの2つの動体視力のうち、どちらが必要なのかというと、どちらも必要ということになります。
なぜなら、DVA動体視力は走行ラインの予測や相手の動きを把握するために必要で、KVA動体視力はレース中の情報を拾うために必要だからです。
相手と接戦になっている最中、自分のラインを走行中に相手の動きを把握する時はDVA動体視力、反対に迫り来るコーナーやピットからの情報を把握するにはKVA動体視力が欠かすことができません。
そのため、レーサーは両方の動体視力を鍛える必要があります。
一般の人はスピードが上がれば視野が狭くなる
「スピードが上がれば運転手の視界はどんどん狭くなる」
免許を取る時に教習所などでこのようなことを勉強しませんでしたか?
完全に停止している時の人間の視覚は速度によって次のようになると言われています。
- 完全に停止している時・・・両目で約200度
- 40km/h・・・約100度
- 100km/h・・・約40度
また、スピードが上がると、視点は遠くになり、さらに体が緊張して視覚の感覚がどんどん鈍ってくるため、近くの風景が見えなくなってきます。
しかし、レーサーはスピードに対しての慣れもあるため、まず緊張感が少なくなります。
これだけで一般の人に比べてかなり視界が広く取れます。そこに日常の動体視力のトレーニングをすることで、さらに視野が広がります。
動体視力は8〜20歳の間に一番発達するが、年齢とともに衰えてもくる
動体視力は年齢とともに発達し、8〜20歳が最も成長すると言われています。しかし、それ以降年齢とともに少しづつ衰えていき、40歳を超えると急激に悪くなります。
その理由は、年齢ととも目の筋肉も無くなり、動体視力も低下してしまうからです。
そのため、若い時にどれだけ動体視力を鍛えておくかがポイントとなるでしょう。
動体視力はトレーニングすれば何歳からでも向上する
「じゃあ動体視力は若い頃に鍛えないとそれ以降は低下する一方なの?」
という疑問もあると思いますが、そんなことはありません!
確かに動体視力は何もしなければ年齢とともに衰えていきますが、適切なトレーニングをすることで何歳からでも向上することができます。
そこで、次項から効果的なトレーニング方法をご紹介します!
日常生活でもできる3つのトレーニング方法
日常生活でも動体視力を鍛えることができます。主な方法は次の4つがあります。
- 近くと遠くを交互に見る
- 電車に乗っているときに看板の文字を読む
- ランニング中に自分の指紋を見る
順にご紹介しますね。
1.近くと遠くを交互に見る
一番簡単な方法でもあるのが、「近くのもの」と「遠くのもの」を交互に見ることでしょう。
それを繰り返すことにより、凝り固まった毛様体筋をほぐし、ピント調整力を鍛えることができます。
これは、どちらかと言えばストレッチ効果であるため、ずっとパソコンの画面を見ている時などにちょっと外の景色を眺めるなど、リフレッシュしたい時におこなうと効果的です。
2.電車に乗っているときに看板の文字を読む
電車に乗っているときは、通過する駅の看板などに書かれている文字を一瞬で読むなどの方法も効果的です。
その場合は、最初は疲れてきますが、慣れれば鍛えられて割と見えてきます。
さらに新幹線で行うと、より効果的ですね!
3.ランニング中に自分の指紋を見る
ランニングしながらでも動体視力を鍛える方法があります。
走るときに腕を交互に振りますが、指を伸ばし、人差し指の先を交互に見ることで瞬時に目やピントを合わせるトレーニングになります。
慣れてくると指紋まで見えてきます。
ランニングで持久力を鍛えながら動体視力も鍛えることができ、非常に効率が良いためおすすめします!
動体視力を鍛える5つのトレーニング方法
日常生活以外にがっつり鍛えたいと考えるなら、次の方法をおすすめします。
動体視力を鍛えるトレーニングといっても様々な方法があり、もちろん方法によって鍛えるものが違います。
その方法は、主に次の5つに分けることができます。
- 追従性運動をトレー二ングする
- 跳躍性運動をトレー二ングする
- 瞬間視をトレーニングする
- アプリでトレーニングする
- 専用のメガネを使う
順に詳しくご紹介しますので、鍛えたいものや自分に必要なものを見つけ、最適なトレーニングメニューを作りましょう!
1.追従性運動をトレー二ングする
追従性運動とは、動いているものを目でゆっくりと追いかける運動のことで、対象物が静止し続けても、それから視線をずっと離さないといった動作も追従性運動に含まれます。
そのため、追従性運動は動体視力の基礎でもあります。
追従性運動を鍛えるには、目で見た情報を素早く処理し、それと同じように適切に手を動かすことが練習になります。
2.跳躍性運動をトレー二ングする
跳躍性運動とは、現在見ているところから、別のところへ跳び越すように素早く目を動かす運動のことになります。
また、点から点へと視線を移動する運動の中に、上下左右はもちろん、前後の奥行きのピントを合わせる運動も含まれています。
野球がわかりやすい例で、飛んでくるボールを打ち返したり、相手に投げたりする動作をするには、目の跳躍性運動が必要になり、これが劣っているとキャッチできなかったりと失敗しやすくなります。
こちらの映像のように瞬間的に現れる点を見ることで跳躍性運動を鍛えることができます。
3.瞬間視をトレーニングする
瞬間的に見たものの色や形、模様といったものを識別する「瞬間視」の能力を鍛えると、見たものを一瞬で把握することができます。
一度に把握できる情報量が増えると、その分脳の処理能力にも余裕が生まれるため、自ずと他の能力も鍛えられます。
例えば、卓球やテニスは一瞬で打球の回転方向やコースを把握して打ち返さなくてはいけませんので、瞬間視は情報の処理能力の他に脳の判断能力も同時に必要となります。
瞬間視を鍛えるには、見えたものを一瞬で自分の頭の中にイメージする鍛え方があり、一瞬で表示されるものを見て、何があったかを判断するトレーニングが効果的でしょう。
4.アプリでトレーニングする
現在はスマホのアプリで動体視力を鍛えることもできます。
動体視力のトレーニングは1日に長時間練習するということよりも、毎日少しづつ継続することが重要であるため、アプリをスマホに入れておけば、隙間時間にちょっとトレーニングなんてことも可能です!
時間の有効活用に最適ですね!
こちらのサイトで動体視力が鍛えられるアプリが紹介されています↓
動体視力を鍛えるゲーム アプリランキングTOP10
5.専用のメガネを使う
動体視力を鍛える方法の一つとして、動体視力トレーニングの専用メガネを装着する方法があります。
ビジョナップのトレーニングメガネについてはこちらで詳しくご紹介しています↓
ビジョナップ(Visionup)トレーニングメガネは動体視力を鍛える!
このメガネをかけながらボールを投げたりキャッチしたりといった簡単な動作をすることで、視覚能力を向上させることができます。
どのような仕組みかというと、一瞬のうちに何度もシャッターのように視界が閉ざされることで、ストロボ効果を感じながら運動を行います。
そして、連続して動いているものでも1枚1枚の静止画として目に焼き付けることで、早く動くものでもゆっくり動いているように感じることができるのです。
このメガネは一見ただのスポーツメガネであるものの、レンズ部分が点滅するシステムであるため、屋外でもストロボ効果を体感することができますので、どのような場所でも使用することができます。
サッカーやプロテニス界、プロ野球オリックスのトレーニングでも使用されていたことが有名ですね。
また、球技以外にもクレー射撃の選手やレッドブルのF1チームも使用しているという実績があります。
少し前までは、ナイキが販売していましたが、現在はビジョナップ(Visionup)
からストロボ速度が細かく調整できる改良型が販売されています。
効果的にトレーニングするならトレーニングメガネがおすすめ
動体視力を鍛える方法はたくさんありますが、最も効率がいいのはトレーニングメガネではないでしょうか?
1日15分、週に3回ほどのトレーニングを2〜3ヶ月行うだけで、
- 集中力が高まり、持続する
- 判断が早くなった
- スピードがゆっくりと感じる
- 反射神経がよくなった
など、パフォーマンスが向上した実績があります。
もちろんスマホアプリなどで隙間時間にできるのもいいですが、トレーニングは集中しておこなう方が効果が大きくなります。
と考えると、トレーニングメガネを使って週3回15分集中してトレーニングをするとメリハリをつけておこなう方がいいですよね。
まとめ
動体視力とは、11種類ある視力のうちの一つで、動くものを目で捉えた時に確実に認識できる能力のことで、レーサーはもちろん、スポーツ選手全般に必要な能力であると言えます。
しかし、動体視力は20歳をピークにどんどん衰えていくため、日頃のトレーニングを欠かすことができません。
特にモータースポーツであれば一瞬の判断ミスが命取りになることもあるため、動体視力を鍛えることは非常に重要です。
でも、動体視力を鍛えようと思ってもすぐに鍛えることはできないため、少しでも効果的なトレーニングをし、確実に効果を発揮できるようなトレーニングし、安全にレベルアップしたいですね!
動体視力を身に着けると、マネをするのも上達します。バイクレースのトレーニングはマネも大事です↓
集中力も大事!↓
持久力を身に付けるトレーニングでもあるランニングについてはこちらから↓
バイクでサーキットを走ってみたい人はこちらを読んでみてください!↓