ファミリーカーだけでなく、業務用としても人気があるホンダのバモス(アクティ)。
残念ながら2018年に生産終了してしまいましたが、現在はN-VANが後継車モデルとして引き継いでいます。
バモスは長年の人気車種でしたので、中古車としての球数も多く、かなり人気があります。
しかしバモスやアクティのエンジンは長年走行していると、ヘッドガスケット抜けが起こりやすいというネガティブポイントがあります。
一定距離を走ったエンジンであればヘッドガスケット交換をしなければ、突然ヘッドガスケットが抜けてエンジンが故障してしまうこともあります。
実際筆者の知り合いでバモスやアクティを所有している人も長年乗っているとヘッドガスケット抜けが発生しています。
これはもうバモスの持病のようなもので、ヘッドガスケット交換はやっておいた方が良いでしょう。
筆者も中古のバモスを購入しましたが、走行距離が13万キロであるにもかかわらず、タイミングベルト交換は行っていませんでした。
そこでお世話になっている修理屋さんにお願いし、対応してもらったんですよね。
そこで本記事では、
- ヘッドガスケットが抜けているかの判断方法
- ヘッドガスケットが抜けていると起こる症状
- ヘッドガスケット交換する際の工賃
- 実際に交換した時のレポート
といった内容をご紹介していきます。
これからバモスやアクティを購入しようと考えている人や、すでに所有している人は、ぜひご一読ください。
そもそもヘッドガスケットとは

そもそもヘッドガスケットとはどういうものなのでしょうか?
車の部品は様々な部品が組み合わされてできていますが、部品同士で液体や気体が通ることもあります。
液体や気体が通る部分には、必ずガスケットと呼ばれる部品を挟み、密着性を高めているのです。
部品の表面はきれいな平面が出ているのかというと、決してそうとは言い切れません。
ミクロン単位で細かな隙間があったり、わずかに歪んでいることもあるのです。そのため直に密着させると、わずかな歪みから液体や気体が漏れてきます。
様々な部分に用いられるガスケットですが、ヘッドガスケットは、エンジンのシリンダーヘッドとシリンダーブロックの間に用いられる大型のガスケット。
ヘッドガスケットは、シリンダーの爆発圧力やオイル、冷却水をしっかり分離しなければいけませんので、非常に複雑かつ重要な働きがあるのです。
そのため材質が違う金属を何層にも重ねたものが使用されており、高いシール性を確保しています。
そしてヘッドガスケットが劣化してシール性を維持できなくなることを「ヘッドガスケットが抜ける」と表現されるのです。
ヘッドガスケットが抜けると、シリンダー自体が正常な圧縮をすることができなくなるため、エンジン自体に大きな異常を起こしてしまうのです。
ヘッドガスケットが抜ける原因
一般的にヘッドガスケットが抜ける原因として考えられるのは、
- エンジンがオーバーヒートする
- ガスケット自体が劣化してシール性を保てなくなる
と言ったことが考えられます。
①エンジンがオーバーヒートする
まず、エンジンがオーバーヒートすると、シリンダー自体が熱膨張を起こして大きく歪んでしまいます。
エンジンは基本的にアルミ製ですので、熱膨張率が高く、一度オーバーヒートさせると大きく歪んでしまうのです。
シリンダーが歪むとガスケットの密着性がなくなり、高圧の燃焼圧力が吹き付け、ガスケットが破損してしまうのです。
②ガスケット自体が劣化してシール性を保てなくなる
もう1つの原因として考えられるのが、ガスケット自体の経年劣化によるもの。
長年高温や高圧力にさらされたガスケットは、徐々にシール性を保てなくなり、ガスケット抜けを起こすのです。
バモス(アクティ)のヘッドガスケットが抜けやすい理由

では話を本題に戻します。
バモスやアクティ(バモスとアクティのエンジンは同じのため以下”バモス”に統一)のヘッドガスケットは、なぜ抜けやすいのかについて考えてみることにします。
※ちなみに自動車整備士の人にも聞いて確認してみました。
主な理由は、
- バモスはガスケット自体が弱い
- ミドシップレイアウトのエンジンは冷却効率が悪いから
だと考えられます。
前項の、一般的にヘッドガスケットが抜ける原因をもう1度見てみましょう。
- エンジンがオーバーヒートする
- ガスケット自体が劣化してシール性を保てなくなる
おそらくバモスの場合だと「②ガスケット自体が劣化してシール性を保てなくなる」が原因であることが多いと考えられます。
なぜなら現在ホンダからバモスのヘッドガスケットの対策品が販売されているから。
もちろんヘッドガスケット自体が弱いことが全てではなく、いくつかの原因が重なるため、ヘッドガスケット抜けが起こると考えた方が良いでしょう。
例えばバモスの場合はミッドシップレイアウトを採用していますので、
- エンジンは後ろ
- ラジエーターは前
となっています。
そのためフロントエンジンの車と比べると、冷却効率が悪くなるのです。そうなるとエンジン自体が高温になりやすく、ガスケットが劣化しやすいとも考えられるのです。
バモスのターボ仕様はヘッドガスケット抜けは起こりにくい
ちなみにバモスはターボ仕様もありますが、ターボ仕様のガスケット交換は少ないようです。
その理由として考えられるのは、以下の2点となります。
- エンジンの圧縮率が低い
- エンジンが縦置きレイアウトで冷却効率が良くなっている
バモスのターボ仕様のエンジンの圧縮率を調べてみると、
- ノーマル(NA)・・・10.5
- ターボ・・・8.5
となっていますので、ガスケット自体にかかる負担も少ないのではないでしょうか。
また、ターボ仕様のエンジンは縦置きに変更されており、このレイアウトが冷却水を効率よく循環させることに貢献しているとも考えられます。
バモス(アクティ)のヘッドガスケットのが抜けていると起こる症状
バモスのヘッドガスケットが抜けていると、以下の症状が起こります。
- 馬力がなくなる
- マフラーから白煙が出る
- 水温が一気に上昇する
- オイルが白く濁る
- 冷却水が茶色く濁る
- 冷却水から気泡が出る
これらの症状はゲスケット抜けが起こる初期の段階で発生します。
当然放っておくと最悪エンジンが壊れてしまう可能性がありますので、どういう状態なのかを把握しておきましょう。
それでは順にご紹介します。
①馬力がなくなる
ヘッドガスケットが抜けて圧縮自体が抜けてしまうと、エンジンの馬力が極端になくなってしまいます。
そのため、
- 普段よりもスピードが出ない
- 坂を登らなくなった
などと感じたら、ヘッドガスケット抜けを疑った方が良いかもしれません。
また、圧縮抜けが酷いとエンジンすら始動できなくなります。
②マフラーから白煙が出る
エンジンの内部には冷却水が循環していますが、ヘッドガスケットが抜けると、冷却水がシリンダーに流れ込んでしまいます。
シリンダー内に流れ込んだ冷却水は、そのままマフラーから排出されますので、マフラーからは白煙が上がっているようになるのです。
また、冷却水の量は無限ではありませんので、放置していると、いつかはなくなってしまうもの。
冷却水が無くなったまま放置すると、オーバーヒートを起こしてしてエンジンが壊れてしまうでしょう。
さらに冷却水が大量にシリンダー内に侵入すると、圧縮が大きくなりますので、ピストンやコンロッドが耐えられずに破損する可能性もあるのです。
ちなみにこの現象のことをウォーターハンマー現象と言います。
③水温が一気に上昇する
ヘッドガスケットが抜けると、爆発の熱が冷却水に直接触れるため、水温が一気に上昇してしまうのです。
この状態を放置すればあっという間にオーバーヒートにつながります。
④オイルが白く濁る
ヘッドガスケットが抜けると、エンジンオイルに冷却水が混ざり、オイルが乳化するため、白く濁ります。
乳化すると色が変わるだけではなく、白いヘドロ状になるため、エンジンオイルの通り道であるオイルラインを防いでしまうことも考えられます。
⑤冷却水が茶色く濁る
反対に冷却水にエンジンオイルが混じって冷却水自体がコーヒー牛乳のような色になることもあります。
こちらも乳化と同じく、粘度が出てきますので、冷却効果が極端に低下してしまいます。
⑥冷却水から気泡が出る
エンジンの燃焼圧力がラジエターまで到達すれば、エンジンを空ぶかししたときにボコボコと泡状の排気ガスが出てきます。
冷却水に気体が混じると冷却効果が悪くなりますので、放っておくとオーバーヒートを引き起こします。
バモス(アクティ)のヘッドガスケットが抜けているかの判断方法
バモスのヘッドガスケットが抜けているかどうかを判断する方法は、前項でご紹介したような症状を見つけた時とも考えられます。
また、簡単に見分けられる方法として考えられるのは、
- 水温警告灯が点灯する
- 冷却水の泡立ちが止まらない
- 冷却水の色が茶色になっている
となります。
まず、水温が上昇すると、インパネの水温警告灯が点灯しますので、運転中でも異常に気付くことができます。
また、ボンネットを開けてラジエターキャップを開けて冷却水を確認します。
冷却水の色が茶色になっていたり、エンジンをかけた時に気泡が出てくれば、ヘッドガスケット抜けが疑われるでしょう。
ただし、ラジエターキャップを開けるときは、必ず冷却水が冷えている時でなければいけません。
水温が上昇している時にキャップを開けると冷却水が吹き出して大変危険です。
バモス(アクティ)のヘッドガスケットは”保証の延長対象”+”対策品”がある
これだけ多くのヘッドガスケット抜けの事例が報告されているため、実はホンダからは対策品が出ています。
また、本来新車の保証期間は登録から8年間となっているのですが、ヘッドガスケットだけ9年間に延長されているのです。
そのため、お客様相談センターに連絡すると、最寄りのホンダカーズを紹介してくれるのです。
バモス(アクティ)ヘッドガスケット交換工賃の目安や作業時間

バモスのヘッドガスケットの交換作業にかかる時間は、およそ6〜8時間ほどとなります。
交換作業に必要なヘッドガスケットキットは12,000円ほどで販売されていますが、いかんせんシリンダーヘッドを外さなければいけませんので、工賃の方がかなりかかります。
そのため、修理にかかる費用の目安は、8〜10万円ほどと思っておいた方が良いでしょう。ちなみに筆者がヘッドガスケット交換を行ってもらった修理工場でも、9万円ほどかかりました。
バモス(アクティ)のヘッドガスケット交換の手順
実は筆者は中古で走行距離13万キロのバモスを購入し、直後に知り合いの整備工場でガスケット交換をしてもらいました。その時のレポートもご紹介しておきますね。

まずはフロアマットをめくってエンジンカバーを外します。

エンジンの周辺機器を取り外していきます。

ウォーターポンプベルトは劣化によってヒビ割れていましたので、こちらも交換してもらいました。

プラグ部分のパッキンが劣化していたので、オイルが侵入していました。パッキンも交換ですね。

タイミングベルトは左後輪側から外していきます。

エキマニも外していきます。

さすがに年式が経過していますので、エキマニは結構錆びていました。

ヘッドカバーを外してシリンダーヘッドのボルトを緩めていきます。

シリンダーヘッドを取り外すとこんな感じです。ところどころにスラッジが溜まっています。

シリンダー部分は意外と綺麗ですね。

ピストン部分も意外と良好。

ただし、プラグの電極部分はかなり磨耗していましたので、こちらも交換です。

外したヘッドガスケットはこちらです。

バモス系などミッドシップの車は、冷却水のエア抜きをしっかりしなければ、なかなか綺麗に抜けてくれません。エンジンを回しながら何度も冷却水を循環させます。
また、しばらく走ってエア抜きを行い、最後に再び冷却水を補充します。
まとめ
バモスやアクティのヘッドガスケット交換作業について詳しくご紹介していきました。
持病とも言えるヘッドガスケット抜けは、走行中に起こると、エンジンがオーバーヒートして焼き付いてしまう危険性があります。
そのため、ある程度の年式や走行距離が経過しているものであれば、早めにやっておくのに越したことはありません。
そのためバモスやアクティを中古車で購入した人や、長年乗り続けたいと考えている人は、今回ご紹介したように、近くの修理工場にお願いして早めに対応しておくことをおすすめします。





