バイクのリアブレーキの構造・使い方を解説!【サーキットから街乗りまで】

リアブレーキの使い方
この記事でわかること

リアブレーキの構造・役割・使い方

バイクのスピードコントロールの上で欠かすことができないブレーキ機構。

でもフロントブレーキは頻繁に使うものの、リアブレーキはあまり使っていないという人も多いと思います。

レバーを操作すれば繊細なコントロールができるフロントブレーキに対し、リアブレーキはステップに乗せた右足で微妙にコントロールしなければいけません。

しかもリアブレーキ離れないと簡単にリアタイヤがロックするので、操作も難しく使っていない人も多いと思います。

大事な機構なのは分かってはいるものの、

「リアブレーキなんてちょっとかければすぐロックするからあてにならない…」

こんな人も多いのではないでしょうか?

その気持ち、すっごくわかります。

筆者もバイクレースをしていた時は、ほとんどリアブレーキ使っておらず、バイクレース歴9年でもありながら、最近ようやくその重要性に気付いて使い始めたんですよね…!

しかしいざリアブレーキを使ってみると、速度コントロールはもちろん、バイクが曲がりやすい姿勢作り、安定した加速のためなど、なくてはならないものと気付くはず。

そこで本記事では、

  • リアブレーキの構造
  • リアブレーキをかけた時のバイクの動き
  • リアブレーキの使い方

などをご紹介していきます!

さらに日常生活からサーキット走行まで、あらゆるシチュエーションでの使い方もご紹介していきますので、リアブレーキの指南書的な感じで使ってもらえればと思います!

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目次

バイクのリアブレーキの役割は3つ!

バイクのリアブレーキ

まずはバイクのリアブレーキの役割について見ていきましょう。

リアブレーキは大きく3つの役割に分けられます。

  1. 速度調整
  2. 姿勢の安定化
  3. スライドコントロール

それぞれ詳しくご紹介していきますね。

①速度調整

1番の目的は、目的の場所に停止したり減速したりと、速度調整で使用することではないでしょうか?

構造上フロントブレーキと比べてリアブレーキは小さく、制動力も劣ります。しかしそれでもリアブレーキを使うことで、しっかり減速させることができるのです。

また、フロントブレーキを使うとフロントサスペンションが沈み、前のめりな姿勢となってしまうため、不安定な状態になりがちです。速度調整で使うとぎこちない動きになってしまうんですよね。

リアブレーキを使えばバイクが前のめりにならず、スーッと減速させられます。

②姿勢の安定化

リアブレーキを使うと、リアタイヤから車体を地面に引っ張る力を発生させられるため、バイクの姿勢を安定させることができるのです。

また、リアブレーキをかけるとリアサスペンションが沈み、車体のリア側が低くなります

この状態でフロントブレーキもかけると、前のめりになりにくく、安定して減速ができるのです。

この原理はエンジンブレーキを使っても同じように発生させられるのですが、エンジンブレーキだとブレーキの効き具合がコントロールできません。

そのため予想以上に止まったり、反対にバイクが止まらなかったりすることが頻繁に起こります。

さらにエンジンブレーキが大きすぎると、リアタイヤが暴れてコントロールができなくなります。

リアブレーキはブレーキペダルの踏み加減でブレーキの効き加減がコントロールできるため使いこなせば自由自在に姿勢を整えられるのが大きなメリットですね!

③スライドコントロール

スライドコントロール

サーキット走行など、速く走るシチュエーションでの話になりますが、リアブレーキは駆動輪の回転数がコントロールできるため、スライドコントロールにも役立ちます。

例えば、ビッグバイクではコーナー立ち上がりでアクセルを開けると、タイヤがパワーに負けてホイールスピンを起こしてしまいます。

これは、

  • 加速力に対してエンジンパワーが勝ってしまっている
  • 加速によってリアサスペンションが早く伸び切ってしまった

ことが考えられるからです。

そのため立ち上がりでリアブレーキを当てていれば、

  • エンジンパワーを調整できる
  • リアサスペンションの伸びるスピードを抑えられる

ことができるため、より安全で効率的な加速につなげられるのです。

それ以外にも、コーナー侵入時にあえてリアブレーキを使ってリアタイヤをロックさせ、ドリフトに持っていく小技だってできるのです。

バイクのリアブレーキの構造は2種類に分けられる

次にリアブレーキの構造についてご紹介します。

ブレーキの構造は以下の2種類に分けることができます。

  • ディスクブレーキ
  • ドラムブレーキ

【ディスクブレーキ】はコントロールしやすく熱にも強い!

ディスクブレーキ

ディスクブレーキは、ホイールに取り付けられた円盤(ディスクローター)を両側の摩擦材(ブレーキパッド)で挟み込んで減速させる方式のことを言います。

パッドを押し付ける機構のことをブレーキキャリパーと呼ばれており、バイクの大きさや求める性能などによって様々な形状があります。

ディスクブレーキの特徴
  • 放熱性が高い
  • 安定した制動力
  • メンテナンスも簡単

ディスクブレーキは摩擦板が外側にむき出しになっているため、ブレーキの放熱性が高く、雨に濡れても遠心力で飛ばしてくれるなどの特徴があります。

また、コントロール性が高く、入力しただけ制動してくれるため、繊細なコントロールが可能です。

さらにむき出しの機構はメンテナンス性も非常に高く、タイヤを外さなくても簡単にブレーキパッド交換や洗浄なども行えるでしょう。

【ドラムブレーキ】は制動力重視!

ドラムブレーキ

ドラムブレーキはホイールハブに内蔵されているブレーキ機構で、中から摩擦材(ブレーキシュー)を押し当てて減速させます。古くから採用されている方式で、現在のバイクでも多く採用されています。

ドラムブレーキの特徴
  • 製造コストを抑えられる
  • かけ始めから強力な制動力変えられる
  • 熱を持ちやすい

ホイール内蔵タイプのブレーキは部品点数も少なく製造コストを抑えることができます。

また、ブレーキシューはドラムが回転するのに逆らって作用するため、ドラムに引っかかる方向に動きます(自己サーボ効果)。そのためかけ始めから強力な制動力が得られる特徴があります。

ただしディスクブレーキと違い、ブレーキ機構がホイール内部にある分熱を持ちやすく、長時間の使用では安定した制動力が得られない欠点があります。

リアブレーキを使った時のバイクの動き

ブレーキをかける時にリアブレーキを使って減速すると、バイクがどのような動きになるのかご紹介します。

  1. リアブレーキを先にかけた後にフロントブレーキをかける場合
  2. フロントブレーキを先にかけた後にリアブレーキをかける場合
  3. フロントブレーキだけの場合

この3つのパターンをご紹介しますね。

イメージができればブレーキへの不安もなくせますので、ぜひ頭に入れておいてください。

①リアブレーキを先にかけた後にフロントブレーキをかける場合

リアを先にかける

リアブレーキを先にかけると、スイングアームの構造によりバイクのリアが路面に押しつけられるように作用します。

そのためフロントブレーキをかける前にリア下がりの状態を作り出すことができます。

この状態でフロントブレーキをかければ、前のめりになることを防げますので、その分がっつりブレーキを掛けられるでしょう。

②フロントブレーキを先にかけた後にリアブレーキをかける場合

フロントを先にかける

先にフロントブレーキをかけ、つんのめっている状態でリアブレーキをかけると、あっという間にリアタイヤをロックしてしまいます。

また、バイクが少しでも旋回している時にリアタイヤがロックすればリアが滑り出してしまうこともあります。

さらにリアタイヤがロックすればリアタイヤがガタガタと振動してしまうこともあるため、減速のコントロールが非常に困難になります。

③フロントブレーキだけの場合

フロントブレーキだけ

強烈な減速Gと慣性力でフロントサスペンションが縮み、反対にリアサスペンションは伸び上がります。

そのため後輪が浮き上がる方向に作用し、リアタイヤが持ち上がってきます。しかも前転気味になるので、かなり怖い思いをするでしょう。

対処方法としては、最初はブレーキをじわっとかけたり、シートの後ろに座ったりして荷重を後ろに逃がすなどがあります。

バイクのリアブレーキを踏むシチュエーション:日常生活編

バイクの日常生活

日常生活中でリアブレーキを踏むシチュエーションは以下の通りとなります。

  • ゆっくり曲がる時のため
  • Uターン時の姿勢制御のため
  • 後続車に減速を知らせるため

ゆっくり曲がる時のため

交差点や路地などゆっくり曲がる時は、リアブレーキを微妙に踏んでおき(「当てる」と言います)徐々に減速しましょう。

低速ではフロントブレーキだけだと車体がカクカクした動きになりがちですので、曲がり角では基本的にリアブレーキを当てておくことをおすすめします。

Uターン時の姿勢制御のため

Uターンなどでは、リアブレーキを踏んでリアタイヤを支点にしてクルッと旋回します。

また、低速での車体コントロールはリアブレーキを当てておけば安定した姿勢が維持できます。

後続車に減速を知らせるため

リアブレーキを踏むとテールライトも点灯するため、後続車に減速を知らせたり、注意喚起もおこなえます。

例えば走行中にリアブレーキを何回か当てることで、減速することなくテールライトを点滅させられますので、後続車にライトをテールライトをチカチカして注意を促すのにも使用できるでしょう。

バイクのリアブレーキを踏むシチュエーション:サーキット走行編

サーキット走行

サーキット走行などでは、リアブレーキを以下のように使います。

  • 直線での減速で使う
  • コーナー中に使って車体を安定させる
  • コーナー立ち上がりで使ってホイールスピンを防ぐ

基本的な考えは日常生活の時と変わりませんが、高い車速でリアブレーキを使うのは、微妙な力加減が要求されますので、日常生活と比べるとかなり難しくなります。

直線での減速で使う

サーキットなどのブレーキングでは、フロントブレーキをガッツリ握って減速することが多く、リアタイヤが浮いてしまうこともあります。

「そんな状態でリアブレーキを踏むと簡単にロックして使いものにならない」と思うかもしれませんが、それでもリアタイヤが設置している限り、リアブレーキは踏めばしっかり減速させられます。

ポイントはリアブレーキを踏むというより、リアブレーキに足を添えて「当てる」という感覚。

そしてリアブレーキは、減速すればするほどしっかり効くようになるため、減速途中からしっかり使うように意識すると良いでしょう。

コーナー中に使って車体を安定させる

コーナーでバイクがバンクしている時にリアブレーキを使うと、リアサスペンションがグッと入り、リアタイヤを地面に押し当ててくれます。そのためコーナー中で車体を安定させることができるでしょう。

もちろんバンク中にリアブレーキを踏みすぎるとスピードが落ちすぎてしまったり、そのまま転倒してしまう可能性もあるため、あくまでリアブレーキを当てるということを意識しましょう。

コーナー立ち上がりで使ってホイールスピンを防ぐ

コーナー立ち上がりでリアブレーキを当てることで、ホイールスピンを抑えて効率よく加速させられます。

もちろんホイールスピンを抑えるとタイヤにも優しいため、タイヤが長持ちさせる効果も期待できます。

ただし、加速時のステップ荷重をしながらリアブレーキをコントロールするのは、リアブレーキを使うシチュエーションの中で最も難しい使用方法とも言えるため、十分な練習が必要です。

バイクのリアブレーキの踏み方のコツ

リアブレーキの踏み方

それで具体的なリアブレーキの踏み方を見ていきましょう。

微妙な感覚はブーツやペダルの位置によっても変わってきますので、繰り返し練習して感覚を身体に染み込ませることが重要です。

少しでも早くコツが掴めるように、3つのポイントに分けてご紹介しますね!

  1. かかとを視点に回転させるように踏む
  2. かかとの位置もしっかり確認!
  3. 慣れてきたらつま先を「グー」にして微妙な力加減をマスターする!

①かかとを支点に回転させるように踏む

かかとを支点に踏む

バイクに乗るにあたり、ステップ荷重は非常に重要。ステップに荷重をかけつつリアブレーキペダルへの微妙な入力操作をするには、かかとを支点に回転させるように踏み込むのがベストです。

もし支点を定めていないままブレーキペダルを踏むと、いざリアブレーキを踏もうと考えた時に踏みすぎてしまう危険があります。

②かかとの位置もしっかり確認!

かかとの正しい位置

次に、かかとを乗せる位置にも注目します。

ライディングブーツだとかかと部分が切り欠き形状になっているものもあります。

その場合は切り欠きをステップに引っ掛ければ、ステップ荷重しながらリアブレーキも操作できます。

もしスニーカーなどであれば、かかとの形状がステップにフィットするかどうか確認し、シックリくるポイントを見つけ出す必要があります。

③慣れてきたらつま先を「グー」にして微妙な力加減をマスターする!

足グー

さらに繊細なリアブレーキ操作をするための方法として、爪先をグーにして微妙にリアブレーキを踏み込む動作も練習してみましょう。

足首を動かさなくても爪先の指先でブレーキレバーを踏み込むため、ステップ荷重をしっかりしながら微妙なブレーキ操作が可能となります。

バイクのリアブレーキはロックしないように調整してしまうのもポイント!

リアブレーキの調整

リアブレーキの一番の懸念項目として、「踏みすぎること」があげられます。

そんな時は、思い切って自分好みにリアブレーキを調整してしまうのも一つの方法です。

例えば、リアブレーキペダルにゴムバンドを取り付け、踏みすぎないようにあえて固くしておく方法もあります。

ゴムバンドの張力のおかげで踏み加減もしっかり感じることができるため、安心してステップ荷重ができるでしょう。

筆者もサーキット用のバイクのブレーキペダルには常にゴムバンドを取り付けていました。

また、足の大きさや可動域は人それぞれですので、ブレーキペダルを自分好みに交換してしまうのも一つの手です。

バイクのリアブレーキでありがちなトラブル

リアブレーキはフロントブレーキに比べて機構自体が小さく、ついメンテナンスも忘れがちになることも多いと思いますが、他の部品と同様日々のメンテナンスが欠かせません。

ここではリアブレーキのトラブルについてご紹介していきます。

リアブレーキを引きずる

リアブレーキを踏んだら、そのままブレーキがかかった状態になってしまう状態をブレーキを引きずると言います。

ブレーキを押しているピストンの作動不良や、ブレーキパッドのダストが溜まってピストンシールの固着なども考えられるため、ブレーキキャリパーを分解して清掃・点検することをおすすめします。

リアブレーキから「キー」と音が鳴る

リアブレーキをかけた時に「キー」という音がします。自転車でもありがちなトラブルですね。

ブレーキパッドの摩耗やパッドの偏摩耗が考えられますので、その場合はブレーキパッドを新品に交換してしまうと良いでしょう!

【レース業界の話】最近はリアブレーキをハンドブレーキにするのが流行ってきている

ここでちょっとレース業界ではリアブレーキを使っているのかどうかについてご紹介します。

結論から言うと、頻繁にリアブレーキを使っているライダーもいれば、全く使っていないライダーもいます。

最近はブレーキング時に足を出しているライダーが多くなっていますが、ホンダのマルク・マルケス選手は減速時にリアブレーキも多用しているのか、右コーナーでの減速時は足を出していないんですよね。

もちろん右コーナーで足を出しているライダーもいるため、フロントブレーキしか使っていないライダーもたくさんいることが確認できます。

最近はレース業界でもリアブレーキの重要性が話題となり、MOTO-GPではリアブレーキをクラッチレバーの上に取り付けるハンドブレーキが流行りつつあります。

しかもハンドブレーキは、もともとエクストリームバイクでは標準で装備されているため、汎用パーツとして販売されています。

ハンドブレーキ

カスタムの知識さえあれば私たちでもハンドブレーキが搭載されたバイクに乗れるということですね!

最近はリアブレーキにABSが付いているバイクも増えてきた

リアブレーキのABS

リアブレーキを踏みすぎると簡単にロックして制御不能になってしまうのが難しいところ。

しかし最近販売されるバイクの中にはリアブレーキにABSが付いているものも存在しますので、より安全にリアブレーキをかけることができるようになってきました。

ABS・・・ブレーキをかけた時にタイヤがロックするのを防いでくれる機構のこと

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まとめ

リアブレーキは操作が難しく、体得するには「なぜそうするのか」を考えて少しずつ身体に染み込ませることが大事です。

怖いと思うと、かえってに苦手意識が芽生え、ギクシャクした動きしかできなくなります。

そのため今回ご紹介したリアブレーキの構造やバイクの動きを頭に入れながら少しずつトライしていきましょう。

人間はわからないことに対して恐怖心を持つとも言われているため、動きがわかれば徐々に恐怖心に打ち勝つことができます。

リアブレーキをマスターすれば、より一層バイクに乗るのが楽しくなることは間違いありませんので、ぜひチャレンジしてみてください!

  • フロントブレーキについてはこちら解説しています
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