バイクレーサーがよくされる3つの質問〜レースをやる意味とは〜

「バイクレースをしています!」

だいたいこの後に続く言葉。

「え〜すごーい!」

・・・

・・・

「寒いね〜」からの「寒いよねー」みたいな決まり文句。

その後は方程式のように質問されることが3つあります。

  1. 最高何キロぐらい出てるの?
  2. 転けたら痛くないの?ケガしないの?
  3. 優勝するといくらもらえるの?

という質問。

バイクレースしている人のあるあるだと思うのですが、レースを知らない人は疑問に思いますよね。筆者もレースをしていなければ同じ質問をする自信があります!

ということで、今回はよくされる質問に改めてお答えさせていただき、筆者が考えるレースの意味についてご紹介しますね。

目次

①最高何キロぐらい出てるの?

レースの最高速

まず一番よくされる「最高速は何キロ出てるの?」という質問に関しての回答をしていきます。

筆者が体験したサーキットで一番速度が出るところ「鈴鹿サーキットのバックストレート」で考えると、

  • 600cc・・・250km/hぐらい
  • 1000cc・・・280〜300km/hぐらい

となります。

ただ、正直走る方は最高速に関してあまり気にしていません。(メカニックはかなり気にしますが…)

なぜなら、ロードレースという競技は他人と競争し相手より先にゴールすればいいため、ライダーは今「何キロ出ている」などはほとんど考えていないからです!もちろん劇的に遅いと考えざるを得ませんが…!

そのためスピードメーターはほとんど必要ありません。レース用専用バイクにはスピードメーターがついていないのも普通にあります。

それでも最高速を知りたいときは、GPS受信機をバイクに乗せて走行し、走行データをパソコンで解析すれば知ることもできます。

「そんな速度が出て怖くないの?」

という方も多いと思いますが、実態にはコースは広く景色も単調であるため、思っているよりスピード感を感じないんですよね。

もちろん1000ccクラスのバイクにいきなり乗ると風圧と速度に頭が付いていきませんが、結局何回か経験すると「慣れ」が生まれます。

人間の適応性は立派なもので、慣れるとそれが普通になり、徐々に怖さを感じなくなります。

でもこの「慣れ」は結局「慣れ」なんですよね。

継続しないと時間と共に効果が薄れてくるため、長期間サーキットを走らずにいきなり乗ると、また目が追いつかず怖い思いをするところからはじまります。

もちろん一度経験したことを取り戻す作業は、初体験よりも簡単に取り戻すことができるので、そう苦労することはないでしょう。

筆者も最初の1走行目は、まずサーキットのスピード感に慣れるところから始めたりしていました。

②転けたら痛くないの?ケガしないの?

次に「転けたら痛くないの?」という質問の回答です。

  • 身体の痛さは転け方による
  • 心はもれなく痛い
  • 金銭的にももれなく痛い

今までに何十回(もしかしたら何百回かも)と転倒してきたため、その経験からさらに詳しくご説明させていただきますね。

身体的には?

ステーンと転けて地面を滑っていく「スリップダウン」と言われる転けかたはほとんど痛くありません。

しかし、バイクから投げ飛ばされる「ハイサイド」と言われる転けかたは、だいたい逆さから地面に落ちますので、もうホント痛くて痛くて….おまけにケガをする確率も高くなります。

ただ、最近はエアバッグベストなども普及しており、ケガをする確率は以前と比べて下がってきています。

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精神的には?

転倒すると、こちらのダメージの方が大きいでしょう。

なぜなら、

  • せっかくメカニックが入念に仕上げてくれたバイクを壊してしまった
  • トップ争いのデッドヒート中に転倒し、応援してくれた人を一気に裏切ってしまった

などの罪悪感が一気に押し寄せてくるからです。

ライダーの人は割とこっちの痛さの方がキツイんじゃないでしょうか?

金銭的には?

個人でレース活動をしていると、転倒後のダメージ量によって修復するお金もなく、今後のレースを続けられなくなる危険もあります。

  1. 転倒してバイクが壊れる
  2. 修復にお金がかかる
  3. お金がいるので余計に働かなくてはいけない
  4. 身体を酷使しすぎて練習どころではなくなる

↑これ、一見当たり前のことなのですが、実は結構駆け出しのレーサーが陥りがちで、実際ぼくも経験しました。

そう考えると、転倒することで、

  • 身体的
  • 精神的
  • 金銭的

といった痛みのトリプルパンチを喰らうので、間違っても転倒後にライダーに追い討ちをかけるような言動はやめてください!

③優勝するといくらもらえるの?

鈴鹿8時間耐久ロードレース(鈴鹿サーキットで開催される世界的な耐久レース)で優勝すると1000万もらえます。(確か2位は200万円程だった気が)

筆者が参戦していた全日本選手権のクラスは1回優勝すれば36万円ほど(2017年度)もらえます。地方選手権などは本当に微々たるものでしょう。

一見多いように見えますが、たったこれだけなんですよね。

実際に筆者が行ったレース活動の金額を見てみましょう。※車体や部品、タイヤ代や遠征費など大体のものを実費でまかなっていた計算です。

  • 地方選手権年間6レース参戦・・・200万円くらい
  • 全日本選手権年間6レース参戦・・・300万円くらい

そう考えるともう賞金の何倍ものお金をつぎ込んでいるため、仮に賞金をもらっても元を取ることなんてできません。(もちろんもらうに越したことはありませんが!)

リアルな数字だけを見るとレース活動はマイナスでしかありません。

そのため、バイクやレースに興味がない人はびっくりして怪訝な顔をする人もいます。

となると、「なぜそこまでしてレースをするのか?」って疑問になるんですよね。

結局「バイクレースが好きだから」なんですよね

レースシーン

たくさんのお金と時間を使って、リスクを承知でなぜこんな危険なことをするのかというと、結局「レースが好きだから」なんですよね。

結構ざっくりした答えになってしまったので、ここからはレース活動を約8年ほどした中でたどり着いた筆者なりのレースの意味ををお伝えしますね。

バイクレースがお金以上の価値がある理由:結局「自己投資」

レースは「消費」でも「浪費」でもなく「投資」です。きれいごと言ってすみません。

でも、真剣にやれば一気に自分を成長させられる「自己投資」なのです。

なぜなら、競争することによって、

  1. 負けないためにたくさん考える
  2. たくさんのトライ&エラーをおこなうよう
  3. 考えたことを実行する癖を身に着けられる(行動力が身に着く)

からなんです。

また、怪我、最悪の場合「」(競技者である以上どうしても避けられない課題)が身近にあることにより、

  • リスク管理
  • 自分の精神コントロール
  • ものごとを冷静に合理的に考える

という思考が身につきます。

さらに支えてくれている人達と本気で活動することにより生まれる喜び衝突で(時には結果で裏切ってしまうことも)人間関係の大切さを学ぶこともできます。←ここホント重要

さらに、レースを継続するために資金面で厳しいと、

  1. なんとかしようとお金を集めるために必死になる
  2. お金についての知識が身に着く+資金作りでさまざまな仕事も経験

という結果、良いことも悪いことも全部引っくるめた社会勉強もできるのです。

それ以外にもどうにもできないことが必ず出てきますので、心身ともにかなり鍛えられます。

まとめ

結構ネガティブな回答になったものの、

それでもレースをする理由は、レースは自己投資だからです。

なぜなら、

  • トライ&エラーを繰り返し自分を高められる
  • リスク管理などものごとを合理的に考える思考が身につく
  • たくさんの人と関わるため人間関係を学べる
  • 社会勉強、お金の知識が身につく

となるから。

※もちろん人によって考え方も違うので、「いやいや、それちゃうやろ」と思ってもらっても大丈夫です。

なんでも好きなことを一生懸命やると必ず自分のプラスになります。これはキレイ事ではありません多分世の中そういう風になっています。

確かにレースはお金がかかるし安全とは言えません

でもそれ以上の価値があるからやり続けてきたし、レースで色々教わったのは間違いないんですよね…

まあでも、「好きだからやる」だけで十分だと思いますので、ぶっちゃけいちいち意味なんて考えなくても良いと思います。

ただ、あらためて「レースをやる意味」を言語化すると、そうなるのかなと思います。そう考えると….レースも捨てたもんじゃないですよね!

最後は思想ばかりになってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました!

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この記事を書いた人

19歳から約10年間バイクレースをする/鈴鹿4時間耐久レースクラス優勝/全日本選手権フル参戦経験あり
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