サーキット走行をバイクで行う時、特に走り出しに気をつけなければいけないことがあります。
それは、「タイヤがしっかりと温まっているかどうか」です。
特にレーシングタイヤの場合は、適温に温めるとしっかりグリップするものの、反対に冷えている状態だとカチカチになり全くグリップしなくなります。
この傾向は街乗りタイヤの場合でも同じであるため、どのようなタイヤでも適温に温めなければ本来の力を発揮させることができません。
そこで、走行前や走行中にタイヤをしっかりと温める方法をご紹介します。
サーキット走行前にタイヤを温める方法
タイヤが冷えてグリップしない状態でいきなりサーキット走行をすると、全力で走ることができない上、常に転倒のリスクも付きまといます。
そこで、走行前にタイヤを温める方法は以下の2種類の方法があります。
- タイヤウォーマーを使う
- 日光に晒す
①タイヤウォーマーを使う

タイヤに巻いて電気の熱で温めるタイヤウォーマーは今やレースの必需品になりました。
今はセンサーがついており、コンセントに繋ぐだけであとは放置していても適温まで温め、その温度をキープしてくれます。
タイヤウォーマーで温めるポイントはいくつかあります。
- タイヤだけではなくホイールを温める
- そのタイヤの適温になっているのか確認する
まず、タイヤは走行中に走行風も受け、徐々に表面は冷えてくるため、内部まで温まっていないタイヤはすぐに冷えてしまい十分にグリップしません。
空気は熱伝導率が低いため、反対にタイヤ内部が温まっているとしっかりと温まった状態がキープされます。
そのため、しっかりと温まっているかの判断基準として、ホイールを触って温まっているか確認しましょう。
また、タイヤはそれぞれ適正温度があり、使用しているウォーマーは一体何度まで温められるのか確認しておく必要があります。
もしタイヤの適正温度が60℃であるのに対し、タイヤウォーマーの設定温度が80℃になっていれば
走行中に熱ダレしてしまう恐れもあります。反対の場合もまた問題です。
現在は設定温度を決められるタイヤウォーマーも存在します。
また、現在のタイヤの温度を知るためにはタイヤの温度チェッカーを使用すると良いでしょう。


②タイヤを日光に晒す

どうしてタイヤを温めることができないときは最悪日光に晒すという方法があります。
昔レギュレーション上タイヤウォーマーを使用してはいけないクラスのレースの時はよくピットの外にバイクを置き、日光で温めていた記憶がありますww
ただ、太陽の紫外線はタイヤに照射されるとゴムが化学反応を起こし、やり続けるとひび割れの原因につながるため、頻繁に行うのはあまりおすすめできません。
サーキット走行中にタイヤが温まる理由
走行中にタイヤを温める方法は以下の2つが考えられます。
- 摩擦熱によってタイヤが温まる
- ヒステリシスロスによってタイヤが温まる
ただし、2つの温まり方は原理が違い、以下のような特徴があります。
- 摩擦熱・・・タイヤの表面温度は上昇するが、内部は温まらない
- ヒステリシスロス・・・ゴム全体で発熱するため内部も温まる
では以下でそれぞれの発熱の仕方を詳しくご紹介しますね。
①摩擦熱によってタイヤが温まる
路面とタイヤの表面の摩擦力でタイヤがグリップしているため、接地面からは摩擦熱が生じます。
ただ、この熱はあくまで表面上で発生している熱であるため、走行風などで冷やされてしまうこともあります。
そのため、タイヤ自体をしっかり温めるためにはあまり向いていないとも言えるでしょう。
②ヒステリシスロスによってタイヤが温まる
ゴムなど(粘弾性体)は力を加えて変形させると、変形が遅れて生じ、この時消費されるエネルギーをヒステリシスロス(履歴損失)と呼びます。
どういうことかというと、タイヤは走行中の路面の凹凸やGによってたわみ、変形を繰り返しています。それによってヒステリシスロスが生じ、熱に変わります。
またヒステリシスロスは路面に接地した時の荷重で変形し、路面から離れた時の開放時に熱を生じます。
ということは、タイヤを変形させればさせるほどヒステリシスロスが生じタイヤ全体が温まるということになるため、高速走行するだけでもタイヤの変形が繰り返され、タイヤを十分に温めることができるとも言えます。
よくタイヤを「揉む」ということを聞くことがあるかもしれませんが、実はタイヤを温めるということとも捉えられます。
サーキット走行中にタイヤを温める方法
以上でご紹介したタイヤが温まる理由を元に、実際にタイヤを温める方法をご紹介します。
蛇行運転はリスクの方が大きい
蛇行運転をする目的は、タイヤ全体の皮むきをするという目的では利用できますが、タイヤ表面の摩擦熱を生み出すことができるものの、あくまで表面上が温まるだけにとどまります。
そのため、冷えているタイヤを温めるために蛇行運転するのはどちらかというと転倒のリスクの方が大きくなるため、あまりおすすめできません。
ストレートでしっかりアクセルを開ける
上記で紹介したヒステリシスロスを発生させるにはタイヤをたわませた方が良いということになります。
そのため、ストレート場ではしっかりとアクセルを開けてエンジンパワーのストレスを与えながら加速することが重要となります。
ただ、フロントタイヤにストレスを与えようとストレート場で急ブレーキをかけるのは追突される危険性があるため絶対に止めましょうね。
タイヤを揉むように走行する

レースのスタート前のウォームアップランなどは全体のスピードが落ちているため、前のバイクに引っかかり直線でスピードを出せないことも。
その場合はコーナーでいつもより多めにブレーキを引きずってタイヤをたわませたり、旋回中にアクセルを少し開けるのを早くしたりと、タイヤへ積極的にストレスを与え、タイヤ全体を揉むように温めましょう。
あくまでじわっとタイヤにストレスをかけるのであり、間違っても急な動作をして転倒することは避けましょう。
転倒するぐらいなら普通に走ってタイヤをあっためる方がはるかに良いですからねww
まとめ タイヤをしっかり温めるとレースの展開が有利になる

タイヤを温めるのに効果的な方法は
- タイヤウォーマーでタイヤを温める(ただ温めるだけではなく適正温度にする)
- 走り出しは蛇行せず、しっかり加減速を繰り返す(タイヤを揉む)
- ストレートではなるべくスピードを出して走る
となります。
特にスタートして1周目は他のライダーのタイヤも温まりきっていないことがあるため、意外とペースが上がらないこともあります。
そのため事前にしっかりとタイヤを温めることができていれば最初から思い切っていけるためにチャンスが生まれ、今後のレース展開を有利にすることができるでしょう。
