レースの象徴とも言える追い抜きシーンですが、この追い抜きのことをオーバーテイクと言います。
そんなオーバーテイクにも様々な方法があるためご紹介します。
オーバーテイクの方法
オーバーテイクは大きく分けると2種類に分けることができます。
1.ストレートで抜く
2.コーナーの侵入で抜く
もちろんチャンスがあればどこでも抜くチャンスは有りますが、特にその中でセオリーとも言える2種類をご紹介します。
1.ストレートで抜く
ストレートではしっかりと前のバイクの後ろに付き、スリップストリームを利用するようにしましょう。
スリップストリーム(以下スリップ)とは、前のバイクの真後ろに着くことで空気抵抗の軽減や、空気の負圧を利用して走るテクニックのこと。
スリップストリームを利用することで最高速を上げる事ができるため、ストレート上で相手を追い抜く場合に効果的なテクニックとなります。
2.コーナーの侵入で抜く
コーナーの侵入、いわゆるブレーキングで相手を追い抜く場合をいい、その場合は相手を中心に「内側=イン側」「外側=アウト側」と、どちら側から追い抜くかによって大きく変わります。
・メリット・・
相手の懐に入り込むことができるため、少しでも飛び込むことができたらオーバーテイクしやすい
・デメリット・・
コーナリング角度が鋭角になるため、フロントからスリップダウンしやすい
立ち上がりでアクセルを開けるのが遅れるため、スリップにつかれやすい
・メリット・・
クロスラインを狙い、立ち上がりでリスクなく追い抜ける。
・デメリット・・
走行距離が長いため直接追い抜きには向いていない
相手が外にはらんできた場合に弾き出される
確実にオーバーテイクするための3つのポイント
オーバーテイクはただ闇雲に突っ込むのではなく、しっかりと組み立てて戦力的に行う必要があります。
オーバーテイクに必要なポイントは以下の3点となります。
1.クロスラインを意識
2.オーバーテイク後のコーナーも頭に入れておく
3.相手の得意・苦手なコーナーを把握する
一つずつご紹介しますね。
1.クロスラインを意識
無理せず安全にオーバーテイクする方法としてクロスラインを意識する考えがあります。
クロスラインとは、オーバーテイク時に抜く側と抜かれる側の走行ラインがクロスすることで、どちらにもメリット、デメリットが存在します。
クロスラインのメリットは、
・無理に突っ込む必要がない
・立ち上がりのストレートでスリップに着くことができる
・次のコーナーで仕掛けることができる
ということが考えられます。
特に2つ先のコーナーで仕掛ける前にしっかりと後ろにつけるといった「準備段階」として利用する場合もあります。
2.オーバーテイク後のコーナーも頭に入れておく
スムーズにオーバーテイクできたとしても直後は自分が追われる立場になるため、次のコーナーで抜き返されないように注意する必要があります。
特にイン側から思い切って飛び込んでオーバーテイクに成功した場合、相手が同じようなペースで走行していれば、ほぼ確実にクロスラインで後ろにつけられ、ストレート場でスリップに入られる可能性があります。
頑張って抜いた場合に抜き返されてはまた振り出しに戻ることになりかねませんからね。
3.相手の得意・苦手なコーナーを把握する
前のバイクが同じようなペースで走行している場合、1、2周ピタリと後ろにつけて相手のブレーキングポイントやライン取りを把握するようにしましょう。
相手はペースが同じでも必ずしも自分と同じ走り方ではないはず。
そのため、自分が追い抜きできそうなコーナーを把握し、そこでオーバーテイクすると決め、その手前のコーナーからしっかりと後ろに着くという「組み立て」を行いましょう。
無理なくオーバーテイクを成功させるためにしたいこと
オーバーテイクは無理すると転倒するリスクが伴うため、普段の練習から意識し練習しておくことをおすすめします。
普段の練習から他のバイクを抜く練習をする
練習走行の場合は特に単独での走行が多いものの、レース本番は相手がいるため、
・自分の走行したいラインで走ることができない
・オーバーテイクする場合、ラインを変えないといけない
ということが発生します。
いざレース本番になると自分の思っているラインで走ることができなかったり、ペースが遅いバイクがいる場合、いつまでたっても相手を抜くことができないなんてことも。
そのため、走行ラインが変わってもラップが大きく変動しないように走れるようにしておくなど、自分の走り方の引き出しを多く持つ必要が有ります。
とはいっても大きなサーキットやビックバイクの場合は大きなリスクも伴います。
そのため、おすすめはミニバイクなどのリスクが低いバイク・場所で仲間と一緒に模擬レースをしたりと、レース形式の練習を行うと効果的でしょう。
バイクの限界を把握する
練習で意識したいのは、自分のバイクの限界はどこなのかを把握することも大切です。
ただし、限界を超えて転倒すれば良いという訳ではなく、自分が感じる「ヤバいかも」という感覚(以下ヤバいかも感覚)を感じ取る練習を行いましょう。
だいたい自分が感じる嫌な予感は当たっています
練習を重ねていくうちに物理的限界に向かって「ヤバいかも感覚」を押し上げることができます。
そして少しずつ行くとある一定のところで「ヤバいかも感覚」がどうしてもなくならないところが有ります。
そこが自分の物理的限界(あくまで自分の物理的限界)となるため、そこを超えないようにすれば転倒のリスクを無くすことができるでしょう。
実際のオーバーテイクシーンを解説
1本目の走行動画は鈴鹿サーキットの西シケイン立ち上がりからスプーンカーブ侵入のブレーキングでオーバーテイクをしています。
この場合、後ろに付いている時に「スプーンカーブの侵入ラインが空いているかな〜」と考えていたため、手前の西シケインでしっかりと後ろに付くことを意識していました。
結果的にはぴったりと真後ろに着くことができなかったものの、ブレーキングではある程度こっちに部があると思って実行した感じです。
2本目はスポーツランドSUGOの2コーナーから3コーナーの切り返しでのオーバーテイクシーンですが、3コーナーの切り返しでイン側に入れるよう2コーナーをあえてアウト側から並ぶように狙っています。
最後のストレートはバイクのスピード差のおかげでもありますが…
リスクを少なくするために戦略的に考えよう
オーバーテイクはレースで勝つためには欠かせないテクニックであるものの、ただ気合いで突っ込むというイメージも大きいと思います。
しかし「事前に相手の走りをチェックし、隙を見つけて事前のコーナーから仕掛ける」といったように戦略的に行うことでリスクを減らしつつ確実に追い抜くことができます。
そのため、オーバーテイクが苦手という人は一度頭の中で理論的に分解してみることで上手くいくかもしれませんね。