ツーリングをしていると、つい好奇心に駆られていったことのないような道路を開拓したくなることってありませんか。
自由が効くバイクであるからこそ、自由に散策できるのは醍醐味でもあります。
しかし、山奥や林道を進んでいくと、気がつけばどんどん砂利道になっていき、未舗装路面を走っているなんてことにもなりかねません。だからと言って引き返すのも、もったいないような気もします。
もちろん十分注意しながら走るのは大前提ですが、走り方や準備をしっかりしておけば、オンロードバイクでもオフロード路面を走行することができます。
ここでは、オンロードタイヤを履いているバイクで、林道などのオフロード路面を安全に走行する方法や注意点などを動画と共にご紹介していきます。
現代のオンロードタイヤは溝が深く刻まれているため多少のオフロード路面でも安定して走れる
オフロードと聞くと、ゴツゴツしたブロックタイヤを備え付けているオフロードバイクが砂を巻き上げながら走行しているのを思い浮かぶ人も多いでしょう。
ブロックタイヤであれば、ブロック部分が泥や砂をしっかり捉えてくれるため、安定して進むことができます。
しかし、現代のオンロードタイヤは排水性を考えて溝が深く刻まれているものが多く、意外とオフロード路面でもしっかり食いついてくれます。
もちろんオンロード路面のように車体をバンクさせることはできませんが、バイクをしっかり立てておけば、安定して進むことができるのです。
実際にオンロードタイヤでオフロード路面を走ってみた
実際に福井県にある山奥の林道を走行しましたので、オンボード映像を撮影してみました。
手振れ補正が入っているため、実際のところはもっと振動が多くなっています。走り方の解説もしていますので、参考にご覧いただければと思います。
この動画でのオフロード路面走行シーンを頭に浮かべながら、事項の注意点や走り方の項目に目を通してみてください。
オンロードタイヤでオフロード路面を走る時の注意点
オンロードタイヤでオフロード路面を走る時には、注意しておかなければいけないことがたくさんあります。
- 天候の変化に備えておく
- 急斜面や崖があることを想定する
- トラブルが起きた時は自分で対応しなければいけない
- 走行後は車体の清掃・整備をしっかり行う
- 障害物や対向車に十分注意する
- 常に制御できるスピードコントロールで走る
①天候の変化に備えておく
山奥や林道でのオフロード走行は登山に行くようなもの。天候が変わりやすく気温も下がることが多いため、身体的な負担も大きくなります。
そのため、撥水性の高いジャケットや、防寒性の高いインナーを身に付けておくことをおすすめします。
また、悪天候と判断したら潔く引き返すことも頭の片隅に入れておきましょう。
②急斜面や崖があることを想定する
オフロード路面は基本的にバイクが走ることを想定して作られていませんので、急斜面や崖などの危険がたくさんあります。
ラインを外したら崖に即転落なんてことも十分ありえますので、常に危険があることも頭に入れておきましょう。
③トラブルが起きた時は自分で対応しなければいけない
仲間と共にオフロード走行に挑むのはまだしも、ソロツーリングの場合だと自分1人しかいません。
そのため、パンクや事故などのトラブルが起きた際には1人で対応する必要があります。
そう考えると、万が一の時に対応できる準備をしておく必要がありますし、整備知識も事前に身に付けておく必要があります。
④走行後は車体の清掃・整備をしっかり行う
オフロード走行をすると泥や砂利を大きく巻き上げながえらの走行になります。
特に、オンロードバイクだと、マフラーが車体下に通っていることが多く、泥や砂利がもろに付着します。
マフラーについた泥は、放っておくと熱で焼き付き、磨いても綺麗になりません。また、可動部に砂や埃が入ると動きが悪くなり、運動性能が大きく損なわれる原因になります。
そのため、走行後はすぐ車体全体を水洗いするようにしましょう。
⑤障害物や対向車に十分注意する
林道とはいっても公道であることには変わりませんので、対向車が現れる可能性があります。
もちろん整備されていない道であるため、曲がり角を曲がった先に木の枝があったり、岩が転がっていたりすることもあります。
⑥常に制御できるスピードコントロールで走る
これまでご紹介してきた注意点全てに言えることですが、常に制御できるスピードコントロールで走る必要があります。
オフロード路面では極端にグリップも少ないため、アスファルト路面を走行しているようなスピードレンジで走れません。
慣れてくるとついスピードを出してしまいますが、あらゆるリスクに備えて常に制御できるスピードで走行するのを忘れないようにしましょう。
オフロード路面の走り方
オフロード走行についての注意点を知ったら、いよいよ走り方についてご紹介していきます。
- リアブレーキを多用する
- 轍(わだち)から外れないようなラインで走る
- スロットルワークやリアブレーキで向きを変える
くれぐれも無理のない範囲で行いましょう。
リアブレーキを多用する
グリップが少ない路面では、ブレーキをしたときにロックしやすくなります。
特にフロントブレーキをロックすると、一瞬で転倒してしまうリスクがありますので、できるだけリアブレーキを多用するようにしましょう。
リアブレーキであれば多少ロックしてもコントロールすることができますし、リアブレーキをかければ後ろから引っ張る力をかける、安定感を生み出すことができます。
轍(わだち)から外れないようなラインで走る
自動車が走行した形跡があるオフロード路面では轍(わだち)ができていますが、この轍はオフロード路面の中でも走りやすい部分でもあります。
適度に固められているため、タイヤを取られることがありませんので、安定して走行できるでしょう。
ただし、水を含んだ轍だと、荷重をかけた時にズルッと滑ってしまう危険がありますので、十分注意する必要があります。
【上級者編】スロットルワークやリアブレーキで向きを変える
オフロード路面の走行ではバイクをバンクさせることができませんので、コーナリングの速度が極端に低下します。
しかし、スピードが落ちすぎるとかえって安定感が低下してしまいますので、ある程度スピードを残すこと必要なのです。
コーナー立ち上がりでスロットルをワイドに開け、リアタイヤの空転を利用して方向を変えたり、コーナー侵入でリアブレーキを強めに踏み、リアタイヤをスライドさせて向きを変えるテクニックもあります。
※これはバイクのライディングに慣れている人にしかおすすめできません
アクシデントに備えた準備もしておく
どんなに注意をしていても、アクシデントが起こる確率を完全に無くすことはできませんので、アクシデントが発生したときに備えることも重要です。
- プロテクターを装着しておく
- 予備のガソリン携行缶
- パンク修理キットや予備パーツも必須
プロテクターを装着しておく
万が一の転倒に備え。プロテクターはしっかりしたものを身に付けましょう。
理想はモトクロス競技でも着用されている肘や肩、胴体など広範囲を守ってくれるものが良いでしょう。
ジャケットの中に着込むコンパクトなものも販売されていますので、普段はアスファルト路面の走行が中心の人にはおすすめです。
最大限のプロテクションを望むのであれば、バイク用エアバッグを着用するのが良いでしょう。
予備のガソリン携行缶
山奥や林道の走行時は、ガス欠問題は避けては通れません。
ガス欠を起こすと移動することができなくなりますので、最悪バイクを放置しなければいけなくなることも考えられます。
バイクの場合だと1〜2リットルあれば最寄りのガソリンスタンドに十分たどり着けると考えられますので、予備のガソリンを準備しておきましょう。
ちなみに予備のガソリンを持っていると精神衛生上にも好ましいので、この機会に購入しておきましょう。
パンク修理キットや予備パーツも必須
オフロード走行では路面に石や岩があるため、パンクもしやすい環境です。
一度パンクしてしまうと立ち往生することは避けて通れません。バイクを動かすことができるようにするためにも、携帯のパンク修理キットも持ち歩きましょう。
また、転倒した際にブレーキレバーやクラッチレバーが折れてしまうことも考えられますので、予備のレバー類も持っていきましょう。
応急処置に伴い、携帯車載工具も用意しておくことも忘れてはいけません。
オン・オフ両方の路面で安定して走れるおすすめのタイヤ
最後に、オン・オフ両方の路面で安定して走れるタイヤをご紹介します。
- ブリヂストン BATTLAX ADVENTURE A41
- ピレリ Scorpion Trail II
- ダンロップ DT3-R
- ミシュラン ANAKEE ADVENTURE
ブリヂストン BATTLAX ADVENTURE A41
オンロードタイヤでありながら抜群のウェット性能が大きな特徴のBATTLAX ADVENTURE A41は、溝自体が非常に深く、多少の砂利や泥がある路面でもしっかりグリップしてくれます。
また、接地面積の均一化により、悪路でもコントロールしやすい構造となっています。
さらに、トレッド面のセンター部分は摩耗性能に適したコンパウンド、サイド部分はハンドリング性能向上のコンパウンドとなっており、オンロード路面の使いやすさも抜群です。
「次世代のアドベンチャータイヤ」とも言われているように、セローやアフリカツインでの装着を想定して開発されているため、オフロード路面でも安心して走ることができるでしょう。
ピレリ Scorpion Trail II
ピレリから販売されているScorpion Trail IIは、オンロードでのスポーツツーリングの性能と、エンデューロでの両立を目指して開発されたタイヤです。
スコーピオン(Scorpion)の名前のように、サソリのようなデザインのトレッドパターンは、効果的な排水をしてくれるだけでなく、深い砂の路面でもがっちり捉えてくれます。
また、タイヤ自体のコンパウンドもロングライフですので、頻繁にロングツーリングをする人にも向いているタイヤとも言えるでしょう。
ダンロップ DT3-R
ダートトラックの競技用としても利用できるDT3-Rは、コンパウンド自体も非常に柔らかいため、悪路走行でも抜群のグリップを発揮します。
タイヤのライフの短さは唯一の欠点かもしれませんが、未開の地を開拓するのが好きな人にとって心強いタイヤとも言えるでしょう。
ミシュラン ANAKEE ADVENTURE
トレイルバイク用として開発されたANAKEE ADVENTUREは、新開発シリカコンパウンドの採用により、濡れた路面でも優れたグリップを発揮するように作られています。
また、オン・オフ両方での使用が考慮されたパターンによってどのような路面でも高いトラクションを発揮します。
BMW R1250GSの純正タイヤにも採用されているため、信頼性も抜群です。
決して無理をしなければオンロードタイヤでオフロード路面も走行できる
オンロードを想定して作られているタイヤでオフロード路面を走ると、極端にグリップを失い、コントロールが効かなくなるリスクが高まります。
そのため、リスクの面を考えると、オフロード路面を走らないようにする必要があるとも言えるでしょう。
しかし、決められたところだけしか走行できないのは、自由なバイクのツーリングでは物足りないとも感じるはず。
今回ご紹介した注意点や走り方をしっかり頭に入れ、リスクマネジメントさえできれば、思い切って走行してみるのも楽しみ方のひとつではないでしょうか。
もちろん万が一のことが起きた時の自己責任は避けることができませんが、しっかり備えれば、充実した大冒険にすることができるはずです。