レース活動を続けるにあたって避けられないのがレース資金の問題です。
バイクレースには多額な資金が必要で、資金の調達ができなければ、チームやライダーのレース活動は止まってしまいます。
この資金問題を支えてくれるのがスポンサーの存在。
スポンサーの存在によって、バイクレース大会が現在も安定的に続いているとも言えるでしょう。
ところで、バイクレースのスポンサー企業についてどれくらいご存知でしょうか?
スポンサーには海外企業も多く、
「名前は聞いたことがあっても何をしている会社なのか知らない」
という方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、MOTO-GPやスーパーバイク選手など世界選手権クラスに参戦しているチームのメインスポンサー企業をまとめて紹介します。
バイクのカラーリングはメインスポンサーのカラーが反映されることがほとんど
バイクレースを見たことがある方はお気づきかと思いますが、バイクのカラーリングはスポンサーのブランドカラーが反映されることがほとんどです。
なぜならバイク自体がスポンサーの広告になるからです。
スポンサーはチームやライダーを資金面でサポートする代わりに、バイクのカラーリングをスポンサー企業のカラーにしたり、バイク車体にスポンサー企業のロゴを入れたりするのです。
自社のカラーリングやロゴ入りのバイクが走ることで、ブランドイメージの認知向上や好感度アップも期待できます。
例えばレプソルはオレンジを基調としたカラーリングですし、モビスターは青ベースに白の「M」マークが印象的です。※以前は緑の「M」でしたが、2018年から白に変更されています。
スポンサーにタバコメーカーが消えたのはWHOが「たばこ規制に関する世界保健機関枠組条約」を作ったから
一世代前まではF1やMOTO-GPのスポンサーカラーといえばタバコメーカーのスポンサーが多かったのですが、今ではすっかり見なくなりました。
それは、WHO(世界保健機関)が打ち出した条約によって、タバコに関する広告が規制を受けたからです。
もともとタバコメーカーがバイクレースのスポンサーを務めるようになったのは1970年代と言われています。
その当時から、タバコのパッケージをイメージしたカラーリングが採用され、スポンサー全盛期の1980年代のレースシーンは非常にカラフルなものでした。
しかし、世界的にタバコの健康被害が問題になると、WHOが2005年に「たばこ規制に関する世界保健機関枠組条約」を打ち出しました。
たばこの広告,販売促進及び後援(スポンサーシップ)を禁止し又は制限する。
たばこ規制に関する世界保健機関枠組条約
その条約によって、タバコの消費拡大を促す広告が規制を受けることなったため、MOTOGPなど世界的なバイクレースでも、タバコメーカーのスポンサーが次々に打ち切られていったのです。
今はなきタバコメーカーのカラーリングは、歴代のカラーリングの中でもかなり人気が高かったようです。
バイクレースのメインスポンサー(世界選手権クラス)
バイクレースのメインスポンサーで有名な企業をあげてみると、以下のようになります。
- REPSOL(レプソル)
- Red Bull(レッドブル)
- Monster Energy(モンスターエナジー)
- ECSTAR(エクスター)
- IDEMITSU(出光)
- Castrol(カストロール)
- Motul(モチュール)
- PETRONAS(ペトロナス)
- PRAMAC(プラマック)
- SAN CARLO(サンカルロ)
1つずつ紹介していきます。
REPSOL(レプソル)
レプソルと聞くと、「レプソル・ホンダ」をイメージする人も多いでしょう。
レプソルとホンダのスポンサー契約は1995年に始まり、2021年で27年目になりました。「レプソル・ホンダ」はモータースポーツ界において認知度の高い名前の一つと言えます。
レプソルは、石油の探査から製品開発・販売まで一貫して手がける総合エネルギー企業です。
もともとはスペイン政府による国営企業として事業をスタートし、現在は世界37カ国以上に展開する多国籍企業に成長しました。
販売拠点はスペインや中南米がメインで、日本ではあまりなじみがないかもしれませんが、実はENEOSよりも大きなエネルギー会社なのです。
身近なレプソルの製品としては、2輪用モーターオイルの「MOTO」4輪用モーターオイルの「ELITE」「CARRERA」があります。
いずれもレーシングチームの培った経験に基づいて開発された高品質・高性能の製品です。
↓レプソルについてより詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。
Red Bull(レッドブル)
「翼を授ける」でお馴染みのレッドブルは、1987年にオーストリアで誕生したエナジードリンク会社です。
現在世界171カ国、12,000人以上の従業員が働いており(2020年末時点)、エナジードリンク「レッドブル」は年間75億缶を販売し、世界で最も高いシェアを誇っています。
レッドブルは数多くのモータースポーツやイベントをサポートしており、バイクレースにおいては「レプソル・ホンダ」をサポートしています。
また、レッドブルは若手の才能を発掘して育てることにも力を入れており、これまで数々の若手ライダーを発掘・支援してきました。
レッドブルがモータースポーツのサポートに力を入れているのは、エナジードリンクのエネルギッシュなイメージとモータースポーツのイメージが合っているからではないでしょうか。
Monster Energy(モンスターエナジー)
アメリカ発のドリンクメーカーであるモンスターエナジー。
2012年に日本での販売が始まったエナジードリンク「モンスターエナジー」は、インパクトのあるロゴとフルーティな炭酸の味わいが特徴的で、若者を中心に人気を集めています。
モンスターエナジーは、MotoGPやF1といったモータースポーツを始め、様々なアーティストやイベントのスポンサーを務めています。
2020年には「チーム・スズキ・エクスター」と複数年のスポンサー契約を締結し、2021年からスズキとのパートナーシップが始まりました。
今後もモータースポーツ界で活躍しそうな企業と言えるでしょう。
ECSTAR(エクスター)
エクスターはスズキ純正の高性能オイルブランドです。
代表する製品は、「エクスターR」シリーズや「エクスターF」などがあげられます。
エクスターがメインスポンサーを務める「チーム・スズキ・エクスター」は2015年よりMotoGPに参戦しています。
2020年シーズンのMotoGPでは、チーム・スズキ・エクスターが年間チャンピオンを獲得するなど、今後も活躍が期待できるチームです。
青を基調としたカラーリングが印象的で、2020年には青×シルバーのニューカラーリングが発表されました。
IDEMITSU(出光興産)
IDEMITSUは日本を代表するエネルギー企業です。国内での知名度は高く、テレビCMやガソリンスタンドの看板をよく見かけるのではないでしょうか。
出光の創業は1911年で現在の従業員は約14,000人(2020年3月時点)。原油の生産から燃料油の販売、電力・再生エネルギー事業まで幅広く手がけ、海外にも61拠点を構えます。
モータースポーツにおいては、ホンダが掲げる「アジアから世界へ」というスローガンに賛同し、ホンダとパートナーシップを結び、アジアタレントカップのメインスポンサーも務めています。
MotoGPでは、中上貴晶選手が所属する「LCR Honda」やMOTO2クラスの「IDEMITSU Honda Team Asia」、MOTO3クラスの「Honda Team Asia」のメインスポンサーを務めています。
出光カラーのバイクは、赤と白を基調としたカラーリングに、「アポロマーク」と呼ばれる出光のロゴマークが入っています。
Castrol(カストロール)
イギリスのロンドンで1899年に創業したカストロールは、自動車やバイク、船舶用の高性能のオイルブランドです。
バイクオイルの主力製品である「POWER1」シリーズは、バイク用の全合成油で、バイクレースで培った最大限の加速性能が優れた特徴と言えます。
カストロールは、バイクレースやF1などのモータースポーツや、プロゴルフへのサポートにも力を入れています。
バイクレースにおいてはホンダとパートナーシップを結んでおり、緑・赤・白のトリコロールなカラーリングが特徴です。
Motul(モチュール)
モチュールは、フランスに本社を置く、潤滑油やカーメンテナンスケミカルを手がけるメーカーです。
日本ではモチュールジャパン(旧:テクノイル・ジャポンK.K.)が総輸入販売元で、四輪用よりも高価格帯のオートバイ用オイルでのシェアが高くなっています。
各種モータースポーツへのサポートも積極的に行っており、車体の真っ赤なカラーリングが特徴です。
PETRONAS(ペトロナス)
ペトロナスは、マレーシアの国営石油会社です。1974年の創業から、地球規模で事業を展開しています。
事業内容は、原油や天然ガスなどの資源探査および開発・生産、石油化学製品の開発と販売、液化天然ガスの製造供給などと多岐にわたり、現在では世界90カ国以上で事業を展開中です。
ペトロナスはモータースポーツへのサポートを積極的に行っており、ヤマハのサテライトチーム「ペトロナス・ヤマハ・SRT」のスポンサーを務めます。
2021年型のヤマハ『YZR-M1』にもペトロナスグリーンのカラーリングが施されており、バイクレース界では注目を集めています。
PRAMAC(プラマック)
プラマックはイタリアの建設機械メーカーです。ドゥカティのサテライトチーム「プラマック・レーシング」が発足した当初、玉田誠選手や阿部典史選手など、多くの日本人ライダーを起用したことで有名になりました。
現在ドカティのサテライトチーム「プラマック・レーシング」のスポンサーを務めています。赤・青・白のトリコロールを基調とした『デスモセディチ』で参戦しています。
SAN CARLO(サンカルロ)
サンカルロはイタリアのスナック菓子メーカーです。サンカルロのポテトチップスはイタリアのチップス市場で60%のシェアを誇り、日本でいうカルビーのような存在と言えるでしょう。
現在は世界30カ国に輸出され、日本でも一部店舗で商品を購入することが可能です。
「サンカルロ・ホンダ・グレシーニ」はかつてサンカルロがメインスポンサーを務めていたときのチーム名で、カラーリングは、白をベースに赤と黄色のロゴが入ったものでした。
現在はメインスポンサーとして活動をしていませんが、マルコ・シモンチェリ選手や青山博一選手が所属していた時のサンカルロ・ホンダ・グレシーニレーシングは印象強いのではないでしょうか。
かつてバイクレースのメインスポンサーをしていた企業
ここからは、かつてバイクレースのメインスポンサーをしていた企業をいくつかご紹介していきます。
- FIAT(フィアット)
- Rothmans(ロスマンズ)
- KONICA MINOLTA(コニカミノルタ)
- RIZLA(リズラ)
- LUCKY STRIKE(ラッキーストライク)
FIAT(フィアット)
フィアットはイタリアの自動車メーカーで、代表車種の500シリーズは日本国内でも長年にわたって人気を誇ります。
フィアットグループは、イタリアの高級車メーカーであるアルファロメオやアメリカのSUVメーカーであるクライスラー・ジープなどの自動車メーカーを傘下に収めています。
また、グループ全体を見ると、農業機器や航空機の製造・販売、金融機関や新聞社などの事業も行っている大複合企業なのです。
フィアットは、2013年まで「フィアット・ヤマハ」としてMotoGPに参戦していましたが、現在はバイクレースのスポンサー事業は行っていないようです。
Rothmans(ロスマンズ)
ロスマンズはイギリスのタバコ・ビールメーカーで、1999年にブリティッシュ・アメリカン・タバコ社に統合されています。
バイクレース界では、1985年から1993年までWGPのホンダのスポンサーをしていました。
スポンサー自体は1990年代で終了しましたが、NSR80やNSR250のロスマンズカラー(青と白のツートーン)が人気で、現在もバイクレースファンの間では知られています。
KONICA MINOLTA(コニカミノルタ)
コニカミノルタは日本の電子機器メーカーで、オフィス事業やヘルスケア事業などを行う会社です。
現在の従業員はグループ連結で約44,000人で、世界50カ国に海外拠点を構えます(2020年3月時点)。
バイクレースのスポンサーとしては、2005年シーズンからホンダのサテライトチーム「コニカミノルタ・ホンダ」としてMotoGPに参戦。
バイクのカラーリングには、コニカミノルタブルーが採用されていました。
RIZLA(リズラ)
リズラは手巻きタバコ用の巻紙やフィルターを製造する、フランスの大手シガーペーパーメーカーです。創業は1532年で現在も続いており、500年近い歴史を誇ります。
リズラは2000年代に「リズラ・スズキ」としてMotoGPに参戦していました。リズラカラーは鮮やかな青色で、当時のレース会場を彩っていたそうです。
LUCKY STRIKE(ラッキーストライク)
ラッキーストライクは、アメリカのブリティッシュ・アメリカン・タバコ社が製造するタバコブランドです。
バイクレースにおけるタバコメーカー全盛期には、スポンサーとしてバイクレース界を大きく盛り上げました。タバコ広告排除の動きから、現在はスポンサー活動を終了しています。
ラッキーストライクのカラーリングは、数多いタバコメーカーのカラーリングで最も人気があったようです。
街中で見かけるとノスタルジックな気持ちになるファンも多いのではないでしょうか。
まとめ
数々のメインスポンサー企業を紹介してきましたが、もちろんここで紹介した以外にもスポンサー企業は多数あります。
バイクレースに欠かせない存在となったスポンサー企業。レース観戦の際は、チーム名やバイクのカラーリングにもぜひ注目してみてください。
主要なスポンサー企業がどのような会社か知っておくと、今以上にレースを楽しめるかもしれません。