ライダーの皆さんがバイクを乗っていく上で、必ず付き合っていかないといけないのが
愛車の整備メンテナンス。バイク初心者でも必ず通る道だと思います。
その中でも1番身近で重要なメンテナンスと言えば、エンジンオイル交換ではないでしょうか?
エンジンオイルの交換を怠るとエンジンが本来持っている性能を発揮できないどころか、最悪エンジンが壊れてしまいますのでエンジンオイル交換はとても重要。
でも、いざエンジンオイルを買いにお店に行ってみると「車用」と「バイク用」に分かれています。
でも、
- 「車用」と「バイク用」ってどう違うの?
- 正直種類が多くてどれを買えば良いかわからない…
- そもそも車もバイクも同じエンジンだし、安い方でいいんちゃう?
なんて疑問も浮かぶのではないでしょうか?
そこで本記事では、車用エンジンオイルとバイク用エンジンオイルの違いを詳しく解説していきます!
そもそもバイクと車のエンジンの構造が違う
「違いも何も、ガソリンを入れて燃やして、エンジンオイルで潤滑・冷却して…同じじゃないの?」
確かにバイクのエンジンも車のエンジンもガソリンを動かして動力を得るという基本的な仕組みは同じです。
しかし中身の構造が違うのです。
- バイクのエンジン・・・ミッション機構(駆動系パーツ)も一体となっている
- 車のエンジン・・・ミッション機構(駆動系パーツ)は別で付いている
となりますね。
バイクのエンジンの場合
バイクのエンジンは、なぜミッション一体型となっているのかというと、少しでもコンパクトにしたいからでもあります。
バイクは車体の大きさや操作性の観点から、車と比べてスペースの制約が大きくなりがちです。
車と比べてバイクは軽いため、小さな駆動部品でも十分な強度が保てます。
そこで「ミッションやクラッチを小型化してエンジンの中に入れてしまえ!」という考えになったようですね。
エンジンにミッションを組み込んでしまったら整備性が悪くならないの?と思うかもしれません。
しかし最近のバイクのミッションは「カセット式」が採用されているため、エンジンの横からそのままミッションを取り出すことができるため、整備性もかなり優れているのです。
走行性能やルックスに大きく関わるバイクのエンジンは、少しでもコンパクトである方が有利ですね。
車のエンジンの場合
一方車のエンジンは、ミッション(駆動系パーツ)は別機構として分けられています。
なぜなら以下の理由があるからです。
- 強度面から小型化には限界がある
- 整備性を考えると分けた方がいい
車のボディは数百キロ〜1トン近くあるため、大きな車体を動かすためには、強度面を考えると大きな部品が必要となるのです。
また、車はバイクと違ってエンジンやミッションはボディの内部に入り込んでいるため、整備しようとすれば必ずリフトアップしてエンジンやミッションを下さなければいけません。
さらにエンジンの重量やミッションの重量を見てみると、
- エンジン・・・約150kg
- ミッション(AT)・・・約70kg
- エンジン・・・約70kg
- ミッション(AT)・・・約35kg
となっています。
もしバイクのようにエンジンとミッションを一体にしてしまうと、とんでもなく重くて整備性が悪いエンジンとなってしまうのです。
そのため車ではエンジンとミッション(駆動系パーツ)は分けた方がいいとされるのですね!
バイクのエンジンの特徴
バイクといえば、息をのむような美しいデザインや、むき出しのエンジン…!
ライダーの皆様の中には、
V型エンジンのあの鼓動がたまらない…!
直列4気筒のスムーズなフィーリングで気持ちよく走りたい!
いや、バイクはシンプルな単気筒だよ!
このようにバイクのエンジンにロマンを感じる人も多いのではないでしょうか?
バイクのエンジンは見た目的な特徴もありますが、最大の違いと言えば、バイクのエンジンは高回転型のものが多いということです。
車とバイクに乗っているなら一度は見たことがあるタコメーター(エンジン回転計)。
タコメーター(エンジン回転計)とは、エンジンの「回転数」を把握するためのものとなります。
1分間にエンジンが何回転しているかとなっており、「r.p.m」という単位で表します。
また、表示を見てみると「1」のように一桁しか記載されていませんが、この場合は「1000回転」と表します。後ろに「000」が隠れているということですね!
また、エンジンには「これ以上回転できない領域」があり、それをレッドゾーンと呼びます。
基本的にはコンピュータ制御で、レッドゾーンを超えないようにリミッターがかけられています。
しかしいつまでもレッドゾーンでエンジンを回しているとエンジンへの負担が大きくなり、最悪の場合はエンジンが焼き付きを起こしてしまう(エンジンブロー)でしょう。
しかもレッドゾーンは最高出力のピークも過ぎていることが多く、燃料を無駄に消費してしまうだけですので、レッドゾーンまでエンジンを回すメリットはありません。
タコメーター回転数を把握すれば、エンジンの運動量が見れるため、エンジンパワーを効率良く使うことが出ます。
車とバイクのタコメーターを見比べてみると、バイクの方は数字が倍近く設定されているのがわかります。
ということは、 車に比べてバイクのエンジンの方が高回転=運動量が多い のです。
人間もジョギングより全力でダッシュする方が、汗を多くかくので、運動量が多いとなりますね!
バイクも同じで、高回転になる分エンジン内部のパーツ達も高速で動くため、運動量が増えてしまいます。
では、なぜバイクのエンジンは高回転である必要があるのか?
それは 小さなエンジンで大きなパワーを得るためです。
バイクは車に比べても小さい乗りものですので、エンジンもコンパクトである必要があります。
例えば、日本の軽自動車を見てみると、排気量は660cc、馬力は100馬力にも達しません。
ホンダ N-BOX:58馬力(ターボ車は64馬力)
反対にバイクのエンジンは、排気量600ccでも平気で100馬力を超えるモデルも存在します。
ヤマハ YZF-R6:118.4馬力(逆輸入車)
小さなエンジンで馬100頭分以上のパワーがあると考えると、バイクのエンジンの凄さがわかりますね!
それに加えてバイクのエンジンはミッション機構(駆動系パーツ)も一体。バイクのエンジンは1つの機構の中で、精密なパーツが高速で動いて大きなパワーを出しているのです。
車のエンジンの特徴
対して車のエンジンの特徴は、主に以下の2つが考えられます。
- エンジンとミッションが別々
- 低回転型が多い
①エンジンとミッションが別々
まず先ほどもご説明した通り、エンジンとミッション(駆動系パーツ)は別々という事です。別々なので、
- エンジン→エンジン用オイル
- ミッション→ミッション用オイル
が存在します。(スクーターなど「ギアオイル」が別で存在していますこともありますが)
しかも車のミッションにエンジンオイルを入れても壊れません。なぜなら基本的にエンジンオイルの粘度でも十分ミッションを保護することができるから。
しかしミッションオイルの方が粘度が高いことが多く、長期間使用しても十分な潤滑作用を発揮します。実際にミッションオイルを触ってみるとかなりドロドロとしています。
②低回転型が多い
車のエンジンは基本的に1トン以上の車体を動かすわけですから、バイクのエンジンオイル ように高回転で動いているとエンジン内部の消耗が早く、耐久性が損なわれます。
F1のように毎レースエンジンを整備するような状況だと耐久性を考えなくてもかまいませんが、日常生活でも使う車はそうはいきません。
また、いくらパワーを出すためとはいえ、高回転でブン回し続けていると、燃費も悪くなるため、ガソリンがいくらあっても足りません。
そのため量産車では使用エネルギーを少なくして効率よく力を発揮するエンジンが求められるのです。
バイクのエンジンオイルの特徴
バイクのエンジンは先の項目でもお伝えしました通り、動力を生み出すエンジンと動力を伝えるミッションが一体です。
そのためエンジンオイルは、
- エンジン
- ミッション
- クラッチ
の3つをきちんと作動させる働きがあるのです。
エンジンオイルは、以下の5つの役割を担っています。
潤滑
エンジン内部は基本的に金属のパーツで構成されています。当然、金属同士がそのまま擦れ合うと、お互いに傷付け合ってしまうでしょう。そのためオイルで金属パーツをコーティングしてあげることで傷から守り、円滑な動きをサポートするのです。
冷却
エンジンはシリンダー内の爆発によって回転運動を生み出します。爆発で発生する熱と金属パーツが擦れ合う摩擦熱で、エンジンは高温になります。
高温になったエンジンはオイルによって冷却され、長時間の運転にも耐えられるのです。
密閉
エンジン内部ではピストンなど様々な金属パーツが精密に組み上げられています。しかしいくら精密に作られているからと言っても、ミクロン単位で隙間が発生しているのです。エンジンオイルはその隙間に入りこむため、シリンダーなど圧力をかけなければいけない部分でもしっかりと密閉してくれるのです。
防錆
エンジン内部では熱を持つことによって外気との温度差が生まれ、水分が発生してしまうのです。エンジンは基本的に金属でできています。部品が錆びてしまうと強度不足がおきます。他にも錆が剥がれてオイルの通り道を塞いでエンジンブローを引き起こしてしまうことも考えられます。
洗浄
エンジン内部では様々なパーツの働きがあります。長く使っていると爆発から生まれる燃えカスやカーボン、パーツの摩耗による金属片などがエンジン内部に溜まってしまいます。
オイルはそれらを洗浄する役割があります。実はエンジンオイルを抜いたときに真っ黒になっているのは、そのためでもあるのです。
15,000回転近く回るバイクのエンジン内で、上記の役割を果たしているバイク用エンジンオイルは、過酷な環境でも油膜が切れないようになっているのです。
車のエンジンオイルの特徴
車のエンジンは、動力を生み出すエンジンと動力を伝えるミッションが別にあります。
車のエンジンオイルも基本的な役割は同じですが、
- エンジンオイル・・・エンジンに適した作り(冷却性や洗浄性など)
- ミッションオイル・・・ミッションに適した作り(円滑性、耐熱性など)
と、それぞれの機構に特化した作りとすることができます。
そのため車のエンジンオイルは、大きなエンジン内で動力を生み出すためのサポートに専念し、ミッションオイルはミッションがその動力を駆動系に伝えるためのサポートに専念するという別々の役割を担っているのですね。
バイクに車のエンジンオイルを使うのはリスクがある
ではなぜバイクのエンジンも車のエンジンも基本的な仕組みは同じなのにオイルを分ける必要があるのか?
バイクのエンジンオイルは、
- 車のエンジンと比べて高回転
- クラッチやミッションにも関わっている
からでもあるからです。
スポーツカーやレーシングカーなど例外もありますが、バイクのエンジンの方が運動量も負担も大きい為、より高負荷に耐えられるだけのエンジンオイルが求められるのです。
そのためバイクのエンジンはバイク用のエンジンオイル意外入れない方が良いとも考えられますね。
バイクに車用のエンジンオイルを入れた時に起こる不具合
では、バイクのエンジンに車のエンジンオイルを入れると具体的にどんなリスクがあるのかというと…
一番の問題はクラッチ滑りが起きるということです。
バイクのエンジンと車のエンジンは中身の構造が違い、バイクのエンジンはミッションも一緒で、車のエンジンはミッションが別にあります。
そしてほとんどの車にはエンジンとミッションの間にクラッチと呼ばれる機構が備え付けられているのです。
バイクのクラッチはエンジンオイルが付着することで正常に稼働するため、バイクのエンジンオイルはクラッチのことも考えて作られているのです。
しかし車のクラッチはエンジンオイルを使用しませんので、クラッチの作動を想定して作られていないのです。
そもそもバイク用と車用では使う状況が全く異なるということですね。
そのためミッション・クラッチの性能を十分に維持・発揮することができず摩耗が進み、放っておくとクラッチ滑りが起きる可能性が高まるのです。
クラッチ滑りが起きると、せっかくエンジンから生み出された動力が上手く伝わらないため、いくらエンジンを回しても加速が鈍いままとなります。
そのほかに、オイル焦げのような異臭がしたり、ミッションが上手く繋がらなくてギアチェンジの際にゴリゴリとギアを鳴らしてしまったりといった症状が出てきます。
最悪エンジンが動いていても空ぶかしのようになり、まったく前に進めなくなることも考えられるでしょう。
車にバイクのエンジンオイルを入れるのは基本的には問題ない
反対に車のエンジンにバイクのエンジンオイルを入れてみるとどうなるでしょう?
バイクのエンジンオイルは車のエンジンオイルと比べて高温や高回転でも油膜が切れないような作りになっていますので、基本的には車に入れても問題ないと考えられます。
しかしそのエンジンに推奨される粘度が合わず、エンジンに負担をかけてしまうことも考えられます。
また、値段的なことを考えると、バイクのエンジンオイルを車に使用するのはコスパが悪いとも考えられます。
そのため何らかの原因で車のエンジンオイルがなくなったからと言って、暫定的にバイクのエンジンオイルを入れるのはアリかもしれませんが、車用のエンジンオイルが手に入ったらすぐに交換しておく方が良いでしょう。
ただし2ストロークエンジンオイルはNG!
バイクのエンジンは、
- 4ストロークエンジン
- 2ストロークエンジン
と2種類に分かれており、使用するオイルの種類も違ってくるのです。
4ストロークエンジン(以下4st)と2ストロークエンジン(以下2st)の特徴をそれぞれ見てみましょう。
- 4stエンジン・・・「吸気」「圧縮」「爆発」「排気」4工程をピストン2往復かけて行う
- 2stエンジン・・・「吸気と圧縮」「爆発と排気」を同時に行う
- アイドリング中の音は静か
- 走行中は「ブーンブーン」と野太いエンジンサウンド
- アイドリング中は「パランパランパラン」という音
- 走行中は「ビーン」と甲高いエンジン音
- チャンバーから白煙やオイルが出ることもある
2stエンジンは、エンジンを燃やすためにガソリンとエンジンオイルを混ぜた混合燃料をクランクケース内に送り込み、その混合燃料が潤滑油(エンジンオイルの役割)としての役割も担っているのです。
2stエンジンで使用するオイルは燃焼される前提で作られているため、2stエンジンオイルを4stのエンジンに入れてしまうと、
- 潤滑不足・・・焼き付き(シリンダー、ピストンへの損傷)
- 冷却不足・・・エンジンオーバーヒート、エンジンブロー
に繋がってしまいます。
そのため4ストロークエンジンに2ストロークエンジンオイルを使用するのは絶対にNGです。
まとめ:バイクと車それぞれのエンジンオイルはきちんと専用のものを入れる方が良い!
バイクを乗る上で欠かせないメンテナンスのひとつであるエンジンオイルの交換。エンジンオイルと言っても、世の中にはたくさんの種類・価格のものがあります。
暫定的にバイクに車のエンジンオイルを使用する選択もあるかもしれませんが、愛車のコンディションを保つためにも、きちんとバイク用・車用のエンジンオイルを交換するようにしましょう!