- 12ヶ月点検を受けようかどうか悩んでいる人
- 12ヶ月点検の費用や時間を知りたい人
- 12ヶ月点検をを受ける方法やどこで受けられるかが知りたい人
車を所有している方にとって、定期的な点検やメンテナンスは切っても切れない関係にあります。
「点検」と聞いて、真っ先に思い浮かぶのは車検だと思いますが、それ以外にも12ヶ月点検と呼ばれるものもあります。
12ヶ月点検は、道路運送車両法で定められている法定点検の1つで、12ヶ月(1年)毎に必ず実施しなければいけません。
そこで本記事では、12ヶ月点検について詳しくご紹介していきます。
乗用車・軽自動車問わずお車を所有している方は、ぜひ読み進めてみてください。
12ヶ月点検とは
12ヶ月点検は、12ヶ月(1年)に1度受けなければいけない法定点検(定期点検)です。
道路運送車両第48条(定期点検整備)に定められている「1年毎の定期点検」にあてはまり、車の装置を正しく起動させ、安全運転や公害・故障の防止を目的としています。
自動車(小型特殊自動車を除く。以下この項、次条第一項及び第五十四条第四項において同じ。)の使用者は、次の各号に掲げる自動車について、それぞれ当該各号に掲げる期間ごとに、点検の時期及び自動車の種別、用途等に応じ国土交通省令で定める技術上の基準により自動車を点検しなければならない。
そのため、点検時に部品や機構に不具合があれば、交換や修理をするまでがセットとなります。
12ヶ月点検は義務?罰則はあるの?
12ヶ月点検は法定点検として定められており、義務となっています。
道路運送車両法第48条の「定期点検整備」に定められたている項目を点検し、不具合があれば対応する必要があります。
ただし、12ヶ月点検は未実施者に対しての罰則は定められていないため、実際は実施していない人も沢山います。
ちなみに国土交通省によると、定期点検の実施率は40%前後と、現状半数以上の方が実施していないことになっています。※一説では15%程度とも言われています。
しかし、車の状態管理を放っておくと重大な事故に繋がることもあります。
特に年式が古い車や走行距離が多い車は、知らず知らずのうちに部品が摩耗していくことがあります。また、1つの部品に不具合が起きると、それに関係する部品が連鎖的に不具合を生じることもあります。
そのため、車のコンディションの維持や、周囲の人や同乗者の安全も踏まえて、12ヶ月点検は必ず行いたいところです。
12ヶ月点検の有効期限はいつからいつまで?
- 新車の場合
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新車を購入した場合、始めの1年間は12ヶ月点検が不要です。新車時は全ての部品が新品の状態であるため、点検の必要が無いからです。翌年から1年以内に受けるようにしましょう。
- 中古車の場合
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購入時に12ヶ月点検の点検期限が残っていたら、そのまま期間を引き継いで乗れます。購入時に期限が切れていたら、販売店で12ヶ月点検も一緒にお願いするか、購入後に別の業者に依頼します。
新車・中古車それぞれで12ヶ月点検の有効期限が残っているかどうかの確認は、「点検ステッカー」や「点検整備記録簿」から行えます。
また、12ヶ月点検は有効期間内に受けても問題ありません。ただし、あまりにも早く受けすぎると、その分の点検費用が無駄になってしまいます。
有効期限が切れる月に受けられるのが理想ですが、予約が取れなかったり予定が合わなかったりする可能性もあります。そのため、余裕を持って有効期限の1ヶ月前には受けるようにしましょう。
12ヶ月点検にかかる費用・時間
12ヶ月点検は、実施するお店や受ける車種、部品交換やメンテナンスの有無によって異なりますが、一般的に10,000〜20,000円が相場とされています。
車の購入時にメンテナンスパックに加入していれば、無料で受けられたり、割引価格で受けられたりすることもあります。
また、12ヶ月点検の所要時間は1〜2時間程度です。
ただし、ほとんどのお店で事前予約が必要です。時期によっては予約が取りにくい場合もありますので、受けようと思ったらなるべく早く予約しましょう。
12ヶ月点検を受けるメリット
12ヶ月点検を受けるメリットは、以下の4つがあります。
- 安全面や経済面に大きく貢献する
- メーカー保証が受けられる
- 事故を起こした際にドライバーの責任が軽くなることがある
- 下取りや買取り時の査定額が下がりにくくなる
1.安全面や経済面に大きく貢献する
12ヶ月点検が安全面や経済面に大きく貢献するのは間違いありません。
基本的に車のトラブルは、部品の摩耗や小さな不具合から発展していきます。
例えば、冷却装置やオイルパンからの液漏れに気付かず走行を続けると、エンジンが焼き付き、最悪の場合交換しなければいけなくなります。
また、ブレーキパッドの摩耗に気付かないまま走り続けると、ブレーキローターを傷付けてしまい、交換が必要になります。もちろんブレーキも聞き辛くなり、安全にも支障をきたしてしまいます。
12ヶ月点検を行うことで、これらのトラブルを未然に防ぐことができます。
2.メーカー保証が受けられる
新車のメーカー保証を受ける際は、条件の1つに「12ヶ月点検を受けていること」とされていることがあります。
メーカー保証もきちんと受けられるようにしたい方は、必ず12ヶ月点検を受けるようにしましょう。
3.事故を起こした際にドライバーの責任が軽くなることがある
万が一車両のトラブルによる事故を起こした場合、12ヶ月点検をしていればドライバーの法的責任が軽くなる可能性があります。
反対に12ヶ月点検を行なっていなければ、ドライバーの義務である点検を怠っていたとして、過失が重くなることもあります。
4.下取りや買取り時の査定額が下がりにくくなる
目に見える形で査定額が上がるわけではありませんが、12ヶ月点検をきちんと行い「点検整備記録簿」に記録しておけば、査定士は車の状態が把握しやすくなります。
きちんと点検・整備されている車として見てもらえることで、下取りや買取の査定時にマイナス評価が付きにくくなります。
1・3・6・24ヶ月点検、車検との違い
車の点検には、12ヶ月点検以外にも様々なものがあります。
最も有名なのが車検ですが、車検はあくまで検査をした時点で保安基準をクリアしているかどうかを確認するものとなります。
対して「点検」と呼ばれている12ヶ月点検は、次の点検まで安全に走れるような状態になっているかどうかを確認するものとなります。
そのため「点検」と呼ばれるものに関しては、整備やメンテナンスも含めて考えられるようになっています。
車検ではブレーキが正常に作動するかをテストしますが、ブレーキパッドの摩耗量までは確認しません。対して12ヶ月点検は、摩耗量を確認し、必要に応じてブレーキシューやディスクローターを交換します。
※24ヶ月点検が車検とセットになっているのは、車検のタイミングで消耗品も交換するという意味も含まれています。
車検をお願いした時にスタッフから「〇〇が減っていたので交換しておきました」と言われたら、24ヶ月点検の観点で行われた可能性もあるということになります。
もう一度12ヶ月点検と車検の違いを簡単に説明すると、
- 車検・・・車の各部品や機構が保安基準に適しているかどうかの検査
- 12ヶ月点検・・・車が安全に走れるようにするためのもの。必要に応じて整備やメンテナンスも行う
となります。
また、「点検」と呼ばれるものは12ヶ月点検以外にも沢山あります。
対象車両 | 点検項目 | 罰則 | 費用の相場 | |
---|---|---|---|---|
1ヶ月点検 | その販売店で購入した新車 | 店舗による | なし | 無料※店舗による |
3ヶ月点検 | バスやレンタカー、トラックなどの事業用の車の点検 | 47項目 | 30万円以下の罰金 | 8千円〜1万7千円 |
6ヶ月点検 | 自家用の中小型トラック、レンタカー | 22項目 | なし | 5千円〜1万5千円 |
12ヶ月点検 | 全ての自動車 | 26項目※乗用車 | なし | 1〜2万円 |
24ヶ月点検 | 自家用の乗用車、軽自動車 | 56項目 | なし | 2〜5万円 |
車検 | 250cc以下の二輪、小型特殊自動車以外の自動車 | 56項目※24ヶ月点検と同じ | 違反点数6点(免停30日)6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金 | 5〜20万円 |
12ヶ月点検の期限を確認する方法
販売店によっては12ヶ月点検の有効期限が過ぎる前に、ハガキで通知してくれることもありますが、そうでない場合はご自身で調べなければいけません。
12ヶ月点検の期限は、
- 点検整備ステッカー
- 点検整備記記録簿
から確認することができます。
①点検整備ステッカー
車のフロントガラスに点検整備ステッカーが貼られていれば、ステッカーを見るだけで有効期限が確認ができます。ちなみに点検整備ステッカーは「ダイヤルステッカー」とも呼ばれています。
点検整備ステッカーの表面は、中央に次回点検を行う年と、その周りに点検を行う月が表示されています。
また、ステッカーの裏側には、次回点検を行う年月日が記載され、運転席からすぐにわかるようになっています。
ただし、点検整備ステッカーの貼り付け自体は任意であるため、12ヶ月点検を受けたからといって必ず貼ってもらえるわけではありません。
※点検整備ステッカーは「認定工場」で点検を受けた時にしか交付されないため、自分で点検をした場合もステッカーが貼れません。
もしも点検整備ステッカーが無い場合、次にご紹介する点検整備記録簿から確認しましょう。
②点検整備記録簿
法定点検を受けた際は、点検整備記録に記録して保管する必要があります。
前回に12ヶ月点検を受けていれば点検整備記録簿があり、そこに記載されている点検実施日から1年以内ということになります。
12ヶ月点検の時に必要な書類
12ヶ月点検の時に必要な書類は、以下の通りとなります。
- 車検証
- 点検費用
- 点検整備記録(メンテナンスノート)
- 点検整備ステッカー
基本的には「1.車検証」と「2.点検費用」さえ用意していれば問題ありません。
「3.点検整備記録(メンテナンスノート)」「4.点検整備ステッカー」は、前回受けた時のものがあれば用意しておきましょう。
12ヶ月点検が受けられるところ
12ヶ月点検は、基本的に法定点検を実施しているお店や業者で行うことができます。
大きく分けると、次の5つがあげられます。
- ディーラー
- カー用品店
- ガソリンスタンド
- 車検専門店
- 修理・整備工場
①ディーラー
ディーラーは設備が整っていたり、専門のメンテナンススタッフが整備を行なってくれたりするため、安心して点検が受けられます。
また、購入時にメンテナンスパックに加入していると、12ヶ月点検がサービスになったり、割引で受けられたりすることもあります。
ただし、ほかの業者と比べて点検費用は高めの傾向です。また、一度に受けられる台数は限られているため、繁忙期は中々予約が取れないということも少なくありません。
②カー用品店
オートバックスやイエローハットなどのカー用品店でも、12ヶ月点検が受けられます。部品が豊富ですぐに代替品が用意できるため、ディーラーと比べて費用が低い傾向にあります。
ただし、カー用品店でメンテナンスを行う人の技術のばらつきがあるため、お店によっては当たり外れがあります。
③ガソリンスタンド
一部のガソリンスタンドでは、12ヶ月点検が行えるところもあります。費用も安く、時間も短いのが特徴です。また、点検を受けるとガソリン代が割引になることもあります。
ただし、交換部品のストックが少なく、部品の仕入れに時間がかかるため、不具合が見つかると、逆に費用や時間がかかることがあります。
新車で購入してからさほど時間が経過していなかったり、ある程度点検がスムーズに進むことがわかっている人におすすめです。
④車検専門店
車検専門は点検を専門にしているため、スピーディで安く受けられます。ただし、広告や看板に記載されている費用や時間は、あくまで不具合が無いケースとなります。
実際、問題があると追加で費用が上乗せされるため「思っているよりも高くついた」となることがほとんど。年式が古く走行距離が多い車を依頼する時は注意が必要です。
⑤修理・整備工場
民間の修理・整備工場は技術やノウハウが豊富で、費用も安くしてくれるところが多いです。自宅から近い整備工場が見つかれば、時間や手間も大きく削減できるでしょう。
ただし、業者によって技術や金額の差が激しく、自分に適した業者を見つけるのが難しいこともあります。
12ヶ月点検を自分で行う場合
12ヶ月点検は、必ずしも整備士が行わなければいけないというわけではありません。
他人の車を商用として点検・整備をする際は整備士の資格が必要ですが、自ら所有する車を点検するのであれば、無資格でも行えるのです。
自分で12ヶ月点検を行う時は、自動車整備基準 第2条4項 別表第6 に記載されている項目を点検していきます。
※検査項目については、次項「12ヶ月点検の検査項目」で詳しくご紹介します。
①点検整備記録簿を入手する
12ヶ月点検で使用する「定期点検整備記録簿」は全国の整備振興会で購入できますが、用紙代350円が必要になります。
12ヶ月点検の記録簿はトヨタ自動車の公式サイトからも無料で配られていますので、こちらのPDFデータをプリントアウトして使うことをおすすめします。
②整備基準に基づいて点検を行う
トヨタ自動車の12ヶ月点検整備記録簿は、法令で定められた自動車整備基準よりも項目が細かく分けられています。
排気ガスの濃度などといった12ヶ月点検では不要な項目もあるため、以下の検査項目に絞って点検を行いましょう。
12ヶ月点検の検査項目
かじ取り装置 | パワーステアリング装置 | ベルトの緩み及び損傷 |
制御装置 | ブレーキ・ペダル | ①遊び及び踏み込んだときの床板とのすき間 ②ブレーキの効き具合 |
駐車ブレーキ機構 | ①引きしろ ②ブレーキの効き具合 | |
ブレーキホース・パイプ | 漏れ、損傷及び取付状態 | |
マスタ・シリンダ、ホイール・シリンダ及びディスク・キャリパ | 液漏れ | |
ブレーキ・ドラム及びブレーキ・シュー | ①ドラムとライニングとのすき間 ②シューの摺動部分及びライニングの摩耗 | |
ブレーキ・ディスク及びパッド | ①ディスクとパッドとのすき間 ②パッドの摩耗 | |
走行装置 | ホイール・タイヤの状態 | ①タイヤの状態 ②ホイール・ナット及びホイール・ボルトの緩み |
動力伝達装置 | クラッチ | ペダルの遊び及び切れたときの床板とのすき間 |
トランスミッション及びトランスファ | 油漏れ及び油量 | |
プロペラ・シャフト及びドライブ・シャフト | 連結部の緩み | |
電気装置 | 点火装置 | ①点火プラグの状態②点火時期 ③ディストリビュータのキャップの状態 |
バッテリー | ターミナル部の接続状態 | |
原動機 | エンジン本体 | ①排気の状態 ②エア・クリーナ・エレメントの状態 |
潤滑装置 | 油漏れ | |
冷却装置 | ①ファン・ベルトの緩み及び損傷②水漏れ | |
エグゾースト・パイプ及びマフラー | 取付けの緩み及び損傷 | |
高圧ガスを燃料とする燃料装置等 | ①導管及び継手部のガス漏れ及び損傷 ②ガス容器及びガス容器附属品の損傷 | |
その他 | 車載式故障診断装置の診断の結果 |
12ヶ月点検の気になる疑問
これまでご紹介した内容以外の気になる疑問について、お答えしていきます。
- 車に積んでいる荷物は下ろした方が良いの?
-
12ヶ月点検だけでなく、全ての法定点検を受ける時は、できるだけ荷物を降ろしておくようにしましょう。
どうしても荷物が下ろせない時は、点検や整備に支障を来さない位置に移動させておきます。
- 社用車の場合は?
-
社用車の場合、12ヶ月点検以外に、車種や用途毎に定められた法定点検を受けなければいけません。
- レンタカー(乗用車)・・・6ヶ月点検
- バス・トラック・タクシー、レンタカー(乗用車以外)・・・3ヶ月点検
- 車検と同じタイミングで受けられるの?安くなるの?
-
車検のタイミングでは12ヶ月点検を受けることができません。代わりに24ヶ月点検を受けることになります。
また、12ヶ月点検は車検と別物であるため、車検を受けているからと言って車検費用が安くなるということはありません。
- 経費にできるの?勘定科目は?
-
車を事業で使うのであれば、12ヶ月点検にかかった費用も経費にすることができます。勘定項目は「車両費」となります。
「車両費」は車の維持管理に関わるものであればすべて含まれます。車検代やオイル・タイヤ交換代、ガソリン代や任意保険料も含まれます。
まとめ
12ヶ月点検は、車の所有者が安全に運転するために行わなければいけない点検です。罰金や罰則はありませんが、法令で定められた義務となっています。
また、12ヶ月点検は、車のコンディションを保つ意味でも欠かせません。1年という切りの良いタイミングで消耗品や各部を点検しておくことで、未然に大きなトラブルを防ぐこともできます。
基本的に12ヶ月点検はディーラーやカー用品店、整備工場などで行ってくれます。費用は10,000〜20,000円程で、事前に予約をしておけば1〜2時間程度で終了します。
「どうしてもお金をかけたくない」という方であれば、ご自身で行うのも1つの方法です。
安全・快適なカーライフを送るためにも、ぜひ12ヶ月点検の実施をご検討ください。